一般的に天井は水平でありますが、これを屋根の形状に合わせて斜めの天井にしたものを勾配天井といいます。
水平天井では得られないデザイン性や部屋のアクセントとしても有効です。
でもメリットよりもデメリットの方を知らなければ、勾配天井はあなたにとって不要なものになり、住んでから後悔するかもしれません。
そんな勾配天井のメリット・デメリットとオススメ手法や照明計画をご紹介します。
勾配天井ってなにがいいの?
勾配天井にする最大のメリットは、開放感とデザイン性です。
同じ広さの空間でも、水平天井と勾配天井とではまったく印象は異なり、上方向に空間が伸びることによる開放感、ただ天井が高いでけではないデザイン性を得る事ができます。
私も「ここぞ!」というときには勾配天井でプランします。
まっ平らな天井でもシンプルでいいですが、斜めの天井であれば変化のあるかっこいい部屋になりますからね!
勾配天井をこのお部屋で検証してみましょう。
平らな天井から勾配天井にする過程を、建築CADで作成したイメージ図で解説します。
徐々に見ごたえのある「天井」に変化させますよ。
よくあるリビングです。とくに壁のアクセントもありませんので、シンプルで広いリビングといったところでしょうか。
では、おなじ空間で天井だけを勾配のある(斜めの)天井にしてみます。
どうでしょうか?天井を斜めにしただけで、空間に変化が生まれ、印象は結構変わるかと思います。
このように勾配天井の最大のメリットは、その「開放感とデザイン性」です。
真面目な優等生でもいいですが、ちょっとくらいヨコ道にそれて変化のある人間のほうが面白いですよね。
勾配天井のデメリットを理解しましょう
勾配天井のデメリット。これを知っておかないと間違いなく後悔します。
- 建築費のコストが掛かる
- 光熱費が高くなる
- メンテンナンス費がかかる
斜め具合や間取りにもよりますが、天井の一番高いところは結構な高さになります。
こういった高い場所の施工をする際には、工事に足場が必要になります。
ものすごい背の高い職人さんでも、勾配天井の一番高いところには手が届きません!
大工さんが下地を組む、仕上げ材のクロスを張る、照明器具をつけるなど、ほとんどの作業で足場がなければ施工できません。ゆえに足場代が余分にかかります。よって建設費が高くなります。
また、暖かい空気は上に行きますから、冬場などは水平天井に比べなかなか暖まらない、なんかちょっと寒いと感じるかもしれません。
その為にシーリングファンなどの装備を取り付けることをおすすめします。寒さ対策には断熱性能を上げることも大切です。ゆえに、建設費と光熱費が高くなります。
う〜ん・・・工事費用とランニングコストが掛かるってことですね。
また、水平天井に比べ勾配天井の照明計画は非常に難しいです。
傾斜天井用のシーリング照明もありますが、それだとせっかくの勾配天井がもったいない。ダウンライトだけでは照度が足りないし、おしゃれにしたいとなると結構難しいものです。ゆえに、また建設費が高くなる。
それら電気器具が高いところに取り付くわけですから、そのメンテナンスにも足場などが必要になる場合もあります。またまた、メンテナンス費が高くなる。
これらデメリットを十分に把握して、勾配天井でしかできないおしゃれな空間を計画してみてください。
次は、勾配天井のデメリットを理解した方へ、おしゃれにするポイントを解説します。
ただ単に斜めにしただけではつまらないです。オシャレな勾配天井にしてみましょう!
勾配天井はこうすればオシャレに見える
では、まず照明を一般的なシーリングライトではなく、ダウンライトの照明を配置してみましょう。
ダウンライトのある天井ってやっぱりかっこいいですね!
ちょっと変化が出ていいんですが、なんかまだ寂しいですよね。
天井と壁の色を変化させ、勾配天井に陰影をつける手法
一般的に壁と天井の色を変えると、その境界ライン(この場合は斜めのライン)が強調され、より斜め具合を感じることができます。
また天井の仕上げ材に木目などの方向性のある素材を持ってくれば、よりその「斜め具合」が強調されます。
壁を濃くして天井を明るくすれば、より高さを感じることもできます。
では勾配天井に木目をつけてみましょう。
真っ白い天井よりもかっこいいじゃん!
ぐっと華やかに、木目のラインによって高さ方向も強調され、いい感じの勾配天井になってきました。
床と天井の色味を揃えることで、空間に統一感もでています。
白い壁でもいいけど、ちょっと変化をつけて壁の色もいじってみます。
まぁ好き嫌いもあるでしょうが、木目とコンクリートという異素材を組み合わせることにより、ぐっと変化のあるモダンな空間になりました。
この状態でもいいんですが、さらにアクセントを加えてみましょう。
「インテリアの色使い」については前回の記事をご参考にしてみてください。
物体で勾配天井にアクセントを付ける手法
この勾配天井の空間に、梁などの「物体」があることによって、さらに空間に変化がでます。
水平梁を加え、全体的にちょっとだけ天井の高さを高くしてあります。
水平の梁があることによる「安心感」とより「高さ」が強調されているのがわかるかと思います。
照明器具で勾配天井に変化をつける手法
水平梁を入れたのですから、そこへスポットライトをつけてみましょう。またシーリングファンも配置してみます。
スポットライトのような器具を加えることにより、さらに空間にアクセントがプラスされます。
スタジオみたくてかっこいいね!
シーリングファンを取り付ける時の注意ポイントがあります。
一個前の画像に戻ってみてください。今回の画像では、天井にあったダウンライトをなくしてあります。
なぜでしょうか?
シーリングファンよりも高い位置に照明器具があると、ファンの影が床にできます。そのシーリングファンが回ると影がちらちらするんですよね。これが鬱陶しいです。リビングならなおさらです。
シーリングファンを取り付ける場合は「動くプロペラよりも高い位置に照明器具を取り付けない」
シーリングファンを取り付ける場合の鉄則です。
また水平梁につけたスポットライトであれば向きも変えられますし、椅子などを持ってくれば十分に照明器具に手が届き、自分でもメンテンナンスすることができます。
そのスポットライトもスライドコンセントなどをつけておけば、左右の位置も容易に移動することが可能となります。
この画像にはありませんが、壁にブラケットライトなどを取り付けて、光を天井方向に向けるのもいいかもしれません。特徴である勾配天井を照らすことにより、華やかさや高さをより強調できます。
まとめ
どうでしたか?
勾配天井のある空間の魅力がわかっていただけたでしょうか?
デメリットも十分に把握した上で、勾配天井をあなたの家造りに採用してみてはどうでしょうか?
すいません。もうちょっと手を加えてもいいでしょうか(建築士の呟き)
これで完成でもいいんでしょうが、さらに手を加えてより魅力的な空間にしてみます。
また前の画像を見てみてください。
せっかくの高さのある天井なのに、サッシなどの高さが通常の高さであるために(画像では高さ2mのサッシを入力してあります)いまひとつ迫力にかけます。
そこでサッシをハイサッシ(高さ2m40cm)に変更してみます。
サッシだけの高さを高いものに変更しただけで、さらに高さ方向が強調されました。
さらに気づいた方もいるでしょうか?
室内の勾配天井の斜めが外の軒天と連続しているのに気づきましたでしょうか?
こうすることにより、さらに外との連続性も生まれ、内と外との一体感がでます。
で、最終的に仕上げるとこんな感じ。
こんな部屋で生活してみたいな〜!
ここまで読んでいただいた方は一番最初の普通の画像に戻ってみてください。もうぜんぜん違うでしょう?
シンプルな空間ももちろんいいです。その後で自分で色付けして家を楽しむことができますから。
でもこのような勾配天井のある、アクセントのある空間ははじめから計画していかなくては実現できません。
気に入って頂けた方は、ぜひ家造りのはじめから計画にいれてみてください。
でもデメリットの事を忘れてはいけません!勾配天井のデメリットを十分に頭に入れて計画しましょう。
コメント