新築工事工程記録 基礎工事編その⑨「基礎の防湿フィルム」について解説します。
その防湿フィルムの役目ってご存知でしょうか?何か理由があるから施工しているんですよね、きっと。
でも、実はベタ基礎コンクリートの基礎では、防湿フィルムは必ずしも施工しなければいけないものではありません。基礎によっては省力しても構わない部材なのです。
この記事ではそのあたりも解説しています。
ベタ基礎における防湿フィルムとは?役目はなに?
基礎における防湿フィルムとは、基礎下の地盤面からの湿気をこのフィルムでシャットアウトし、床下空間に湿気を上げさせない為に施工するものです。

こそんなに地面から湿気って出るんですか?
そのように思うのも無理がありません。
では、この写真を見てみてください。防湿フィルムを施工した上記の写真のアップ画像です。
これだけの湿気が地面から上がってくるんですね。で、この湿気をシャットアウトするのが防湿フィルムの役目なのです。
厚さは0.1mm以上で、300mm以上の重ね幅をとってシートを施工します。破れやすい素材のため、破れてしまった時などはテープで補修します(一応・・・)。※一応と書いた意味は、後で解説します。



なるほど・・・こういう写真をみるとフィルムの意味と目的がわかりますね
しかし、必要ないんです、この防湿フィルムは。
ベタ基礎における防湿フィルムはおまけです。



さっきから散々と「地面からの湿気をシャットアウトする」と行っておきながら、防湿フィルムは「おまけ」ですって?
床下の防湿対策は、
- 厚さ6cm以上のコンクリートを打設する
- 厚さ0.1mm以上の防湿フィルムを施工し、シートの上に厚さ5cm以上の乾燥砂を施工する
となっています。
つまり、ベタ基礎構造の基礎であれば、自然と6cm以上のコンクリートを施工しますから(一般的には厚さ15cm)、ベタ基礎であれば防湿フィルムは必要ないのです。
また素材ごとの透湿性能(どれだけ湿気を通すか)は、下記のとおりです。(数値が小さいほど通さないということ)


防湿フィルムの透湿抵抗値は0.082(㎡・s・Pa)/ngであり、コンクリート(10cm厚)の透湿抵抗値は0.0336㎡・s・Pa)/ngです。
つまり、防湿フィルムよりも厚さ10cmのコンクリートのほうが透湿抵抗値が低く、湿気を通さないということになります。さらにベタ基礎のスラブ厚15cmであれば、この数値がもっと低いのは明白です。
スラブとは、床版のことを言います。 一般的に鉄筋コンクリート造の建築物において、床の荷重を支える構造床のことを「スラブ」といいます。ベタ基礎であれば、底のコンクリート部分のことですね。
よって、ベタ基礎における防湿フィルムは「おまけ」なのです。



それじゃなんで防湿フィルムを施工するの?
これは、慣例といいますか、これを削ったところでそんなにコストダウンにもつながらないし、「念の為に敷いておく?」ってくらいな感じですね。
また上記の説明で「破れたところは一応テープで補修する」と書きました。もう分かりますよね、「一応」と書いた意味が。
シートが破れているからといって目くじらを立ててお怒りになるお客様がいらっしゃいますが、テープで補修しなくてもその上にあるコンクリートで防湿フィルム以上の透湿抵抗値があるのだから、テープを張って補修しようがしまいが関係ないということです。ただの見た目の補修です。
逆に布基礎では必須です
あなたの家の基礎が布基礎であった場合は、防湿フィルムは必須です。
透湿抵抗となる物体がなく、地面からの湿気が直接床下に上がってきてしまいますから、必ず防湿フィルムは施工しなければなりません。
防湿フィルムも防湿コンクリートも施工しない布基礎では、シロアリ被害や床下の湿気による木材の腐朽に繋がりかねません。
現代の住宅(ベタ基礎)に防湿フィルムはもう必要ないのかも?
昨今の住宅では、床下の換気も基礎パッキンなどを用いて行う、全周換気が一般的です。
床下に潜ったことがある方ならご存知でしょうが、基礎パッキン工法の床下は風が結構通っています。昔の基礎に開けた換気口なんて比べ物にならないくらい風が通っている。
そのような床下換気対策もしっかり行われている現代の住宅では、厚さ15cmのコンクリートよりも透湿抵抗が劣る防湿フィルムは、もう必要ないのかもしれません。
しかし、周りのみんなが施工しているから「念の為に敷いておく?」が、実情と言ったところでしょうか。
今回の記事は以上となります。防湿フィルムがあまり意味のないものだった、とご理解いただけましたでしょうか?
では、次の記事では「ユニット鉄筋とは?」について解説します。
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