このブログ記事は、建築士が携わるリアル現場の工程に沿って家造り工程記録を書き続ける記事です。このブログ記事(終了予定4月?)を読み続けることによって、木造注文住宅がどのように出来上がっていくのかが分かります。
住宅を建てるお客様が普段見ることはない画像も掲載し、その場面に合わせた解説(建築士のウンチクや建材選びのポイントなど)も書いています。よって自分の家造りで失敗しない為のチェック項目としても使えますよ。
建築士が直に携わる住宅建築レポート記事。今回はその② 遣り方(やりかた)です。
なんですか? 「遣り方」って?
と思うでしょう。どんな住宅現場でも必ず設置するものが「遣り方」です。
では実際の現場を見てみましょう。
家造りの工程その① を見たい方は、こちらからどうぞ。
これが「遣り方」です
なんですか?これ?
家を建てる予定の場所をぐるりと柵で囲んであるけど、何か始めるつもり?
そのとおりです!この木の柵で囲んだ中に、あなたの家を建築することを始めるのです。
そして、これから始める住宅の基礎工事の正確な位置出しを行う為の仮設物のことを「遣り方」といいます。「丁張り(ちょうはり)」と言ったりもします。写真に写っている、杭につながった木の柵みたいなものが遣り方です。
前回の記事で見た「地縄」は、正直言いまして正確ではありません。「おおまかな位置」を地縄で表しています。といっても1cm程度のズレ程度ですけどね。5cmや10cmもずれているようでしたら意味がありませんから。
しかし、建築にはミリ単位の正確性が重要です。境界からの離れ寸法や建物の外周寸法まで、ミリ単位の正確性が要求されます。遣り方ではこのミリ単位の正確な位置出しを行っています。
では、この拡大写真を見てみてください。
木の柵の上に釘が打ってありますね。そこから赤い糸が向こう方面に張られています。この赤い糸の位置があなたの家の外周部の壁の芯になります。これを「通り芯」と言います。
地面に張った地縄ではミリ単位の正確な位置出しはできませんが、このように細い糸で張ればミリ単位の位置出しができます。
そして基準となる位置を建物四面の木の柵に釘で位置出しを行えば、家の正確な位置の基準線が出せたということになります。この基準線をもとに基礎を造っていくんですね。
なるほど!建築専門用語
写真に写っている柵の木のことを「水貫」といいます。
写真に写っている赤い糸のことを「水糸」といいます。
どちらの言葉にも「水」がついていますね。この「水」は水平の「水」です。つまり現場に設置した柵の木も赤い糸も水平に設置されているのです。
そのミリ単位の位置や水平はどうやって出しているの?
もちろん目見当ではありません。ミリ単位の位置出しには「トランシット」と呼ばれる道具を使ったり、水平の確認には「レベル」という道具を使用して、正確な位置出しを行います。
あなたも、道路工事をしている場面でこんな機械を設置して、何か見ている業者を見かけたことがあると思います。実はこの機械で正確な位置を出しているのですよ。
で、このトランシットと呼ばれる機械ですが、実はむちゃくちゃ高価なものです。きっとあなたが想像している金額よりもはるかに高い物です。絶対に一般の方は買わないでしょうが、金額に興味のある方は下記よりどうぞ。
何事も初めが肝心。これで正確な位置出しができました。
今回設置した遣り方で、家の基準となる正確な位置出しができました。
この基準線がずれていれば、これから造られる家がズレたものになってしまいます。遣り方は基礎職人が出す場合と住宅会社の現場担当者(現場監督)が出す場合があります。基礎職人が出す場合でも、この遣り方の時点で現場監督が必ず確認します。それくらい重要なものです。
あなたがもし現場に行って、このような遣り方を設置している状況をみたら、絶対に蹴飛ばしてはいけません。また、「ぐいっ」と触ってもいけません。ミリ単位の位置出しや水平がずれてしまいますからね。
また、この遣り方は、ある程度工程が進んでくると必要なくなりますので撤去されます。遣り方は仮設物ですからご安心を。
今日の作業はここまでです。明日は現場作業しませんので、建築士が作成する図面についてお話する予定です。
では、また次回の記事「ユンボって何?掘り方と一緒に解説」を御覧ください。
コメント