新築を建てるお客様から「家のイメージは大正ロマンで」、というご依頼を頂きました。
建築士である私ですが、わかっているようでわかっていない「大正ロマン」という言葉を、自分なりに調べてみましたので記事にします。
この記事では、大正ロマンという言葉の意味から住宅へのデザイン要素を含めた内容です。大正ロマンという言葉に興味のある方は、ぜひ家造りの参考にしてみてください。
大正ロマンとは?
まず、「大正ロマン」とはどういう意味の言葉でしょうか?
大正ロマン(たいしょうロマン)は、大正時代の雰囲気を伝える思潮や文化事象を指して呼ぶ言葉である。しばしば大正浪漫とも表記されるが、「浪漫」という当て字は夏目漱石によって付けられたとされる。
19世紀を中心にヨーロッパで展開した精神運動である「ロマン主義」の影響を受け、大正時代の個人の解放や新しい時代への理想に満ちた風潮にかぶせて、このように呼ばれるようになった。
wikipediaより
つまり、「大正ロマン」とは大正時代の西洋の文化がいりまじった風潮を表す言葉であり、簡単に言えば和洋折衷ということですね。大正時代はわずか15年という短い時代でしたが、調べてみるとこの時代は関東大震災や第一次世界大戦などがあった激動の時代。そして明治時代から大正にかけて西洋の文化が一斉に入り、人々は期待と不安な中、情緒性のある独特な文化が生まれたようです。
今思うと、ものすごい時代だったんですね。まだ現代のようなテレビやましてやスマホなどあるはずもなく、情報も少ない時代にこの激動。そりゃ独特な文化が生まれてもおかしくないですね。
建築でいう、大正ロマンとは?
建築でいう「大正ロマン」とは、この時代に建てられた洋館のような、レトロでありつつもモダンなインテリアや外装の建物をいいます。「和」でありながらも、その部材のどこかにちょっと「洋」な要素が入った建築デザインです。
日本政府がこの時代に洋風建築の技術を取り込むため、多くの外国建築家を招きました。さらに政府が官庁や学校などの公共建築に西洋式を取り入れた為、その他の住宅に携わる職人などもこの西洋式をまねた建築手法で建物を建てるようになりました。この時の「和に洋があわさったデザイン」が大正ロマン建築です。
外壁はベースにさっぱり目な白い壁、ポイントにレンガ柄も可。付け柱も忘れずに。
外壁材はどんな素材(塗り壁でもサイディングなど)でもいいですが、さっぱり目な柄が似合いそうです。横浜西洋館のような感じに、外壁に付け柱を組み合わせるとそれっぽくなります。付柱が主張できるようにベースの外壁材はさっぱり目な柄の外壁材にしましょう。板張りのような柄の外壁材もグッドです。
玄関ドアデザインはガラスが入ったものがベター。
建物の顔である玄関ドアは木目カラーに装飾的なデザインのガラスが入ったものがいいです。色は建物の雰囲気にあわせて選びたいですが、雰囲気悪くないようであれば緑色などを持ってきても西洋っぽくなります。
インテリアのテーマカラーは濃い茶色と赤・緑・青などの原色
大正ロマンなインテリアを作るのであれば、テーマカラーは赤~濃い茶色をポイントに使っていきましょう。化粧梁や柱あるいは建具などに「木」を使い、渋い茶色でまとめ、ポイントカラーに赤を持ってくると大正ロマンらしくなります。
ポイントカラーは赤でなくてもいいかもしれません。緑や青などの原色でも雰囲気は出ます。大正ロマンで検索するとステンドグラスが出てきますね。この硝子の色もこれらの原色が使われています。
ポイントカラーを入れる場所は、壁の一部やソファの座面、ガラス戸などの一部に入れると雰囲気良くなります。しかしあまりたくさんのポイントカラーを使ってしまうとちょっと違うものに・・・ほどほどで十分です。
ベースの壁の色は白でいいですね。あまり柄のない塗り壁のような(しっくい風)壁が似合います。
アンティーク家具や小物で演出
部屋ができたら、アンテーク家具を置きましょう。取手や脚が装飾的な西洋家具が似合います。リビングにゴージャスなソファを置けば迎賓館のような雰囲気になりますね。
寝室やリビングなどにちょっとこんなテーブルもおすすめ。大正時代もこんな西洋家具が人々の心を掴んだのかもしれませんね。
アンテーク照明で部屋の大正ロマンらしさを演出
大型な家具だけでなく、小物アイテムでも大正ロマンを演出しましょう。ポイントを押さえた場所にこんな照明器具があり、電気を点灯すればもう大正時代にタイムスリップです。
小物も大正ロマンの演出に一役買ってくれます。
テーブルの上や部屋の隅などにちょっとしたアンテーク小物を置けば、さらに雰囲気は向上します。時計もデザインに拘りたいものです。
まとめ
大正は激動な時代。国民が自由な暮らしを求める大正デモクラシーが起こり、自由主義的な考えが広まった時代です。そこに西洋の文化が入り、今までの日本文化に当時の人々がステキと思った西洋要素を加えて、あのような叙情的なデザインが生まれたのだと思います。
これは現代の家造りにも当てはまるのかもしれません。自分がステキだと思ったデザインを、現代の建築に加味すれば、また今から百年後くらいに「令和ロマン」なんて言葉が生まれているのかもしれませんね。
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