上棟式と言う言葉の意味は、wikipediaにこのように書いてあります。
竣工後も建物が無事であるよう願って行われるもので、通常、柱・棟・梁などの基本構造が完成して棟木を上げるときに行われる。
式の方法や次第には神社の祭祀のような規定はなく、地域による差異もある。屋上に祭壇を設けそこで祭祀を行うものや、祭壇のみ屋上に設けて祭祀は地上で行うもの、祭壇も祭祀も地上のものの区別もある。
wikipedeiaより引用
本来は建物の無事を願って行われる上棟式でしたが、一般的なお客様はこの言葉を聞くと、こんなことばかりに気がいってしまうのではないでしょうか?
もしかして投げ餅とかもやらないと?
この記事は「上棟式はやらないけど、せめて上棟時のお礼だけは・・・」って思っている方に向けた内容となっています。
しっかりとした上棟式を行う場合は、この記事の内容は当てはまりませんので、上棟式の作法に基づいて必要な事を段取りしましょう。
効率化を考えて住宅を提供しなければ、会社が存続できない
現代の住宅産業では効率化を考えなければなりません。
何故か?
家を建てる人が減っているからです。
日本の人口はこれからどんどん減少し高齢化が進みます。人口が減少するということは必然的に家を建てる人も減るということです。
その少なくなった家を建てる人を、無数にある住宅会社が取合うわけです。そりゃもう住宅会社は必死です。
また、そんな中でも住宅会社を存続させなければなりませんから、必然的に業務の効率化を考えていかなければなりません。昔ながらのやり方で家を造っていては無駄が多いのです。
無駄が多くては住宅会社の利益率も悪くなり、強いては会社の存続にも影響が出てきます。
当然ですが、職人さんも減っています
大工さんが現場で木材をカットする割当はかなり少ないのです。
上棟時の大工の顔ぶれは昔と異なります
建て方専門大工とは?
上棟作業は大変な労力が必要です。足場を上に登ったり降りたり。重い木材を担いだり叩いたり。それは疲れる作業です。これはいくらプレカットされた木材でも同じです。
なり手が少ない職種で、重労働であるがゆえにある程度給料もいい、でも昔ほど熟練の技術がなくてもできる建て方大工になる人は、失礼な言い方ですが「稼ぐことが目的」の職人さんです。決して熟練の大工技術を身に着けようと志した職人さんではありません。
次から次へと家を上棟させ、年間に何十軒あるいは100軒以上もの家を上棟させる仕事をするのが「建て方専門大工」です。
重労働である建て方作業をどんどん作業ができる熟練ではない職人(時には外国からの研修生もいたりします)に数多く施工させて、表面の仕上げ部分はしっかりとした技術のある大工に工事を担当させる、これが現代の住宅建築です。
大工さんへのお礼が無意味だな?って思いませんか。
日本の住宅会社がすべてこの分離発注を行っているわけではありません。
でも少なくともプレカットはされているはずです。ということは、昔ほどの大工さんの仕事量では無いということです。
また、建て方専門大工でなく最後まで施工する大工さんが上棟を行うとしても、工場でプレカット加工されたキット木材を組み立てる作業が、現代で言う「上棟作業」なのです。
またまた失礼な言い方ですが、そのキット化された部材を組み立てるだけの上棟作業に、昔の大工さんほどの権威性はないのではないでしょうか?
あなたはすでに住宅会社と高額な建築工事を契約したはずです。その契約金額の中には当然現場で働く職人さんの給料も含まれます。もちろん上棟時の作業費も含まれています。
このような状況で、昔ほどの仕事もしていない権威性もない上棟大工に、契約金額とは別の「お礼」を考える必要なんてないでしょう。
そして、あまり目立ちませんが、あなたの家が上棟するまでに関わる人々は大工さんだけではない事を知っておく必要もあります。
「住宅を設計する設計士」、「お金関係を工面する営業担当者」、「上棟までの工程を組んだり材料を発注する現場監督」や、「高度なプレカット図面を作成するCADオペレーター」、「プレカット加工するために働いている工場スタッフ」、「それを現場まで運搬するトラックの運転手」、などなどこれら多数の裏方さんがいることを忘れてはいけません。裏では大勢のスタッフがあなたの家づくりに関係しているのです。
上棟とは、上棟時に現場にいる大工職人さんだけの仕事ではないのです。
- 上棟作業だけを行う建て方専門大工の場合がある
- 大工が木材を加工していた昔とは異なり、現代の構造躯体はプレカット加工されたキット部材である
- 上棟の作業をする為には、現場にいない大勢の裏方スタッフが関与している。むしろ現代の大工さんは現場で作業するだけの職人です
- あなたはすでに家を建てるための金額を払って契約している。その金額内に大工さんの給料は含まれている
お礼はどうしたらいいですか?と住宅会社さんに聞くと明確な回答が帰ってこない場合があるはずです。そりゃ誰でもお金をもらって嬉しくないはずがありませんからね。
しかし、上記の3つのポイントを考えれば、自ずと回答は出るはずです。
それでもあなたは「上棟する為だけに現場に来る大工」に、ましてや「キット化された木材を組み立てるだけの大工」にお礼を払いますか?フローリングを張ったりドアを付けてくれる「別の大工さん」が来るのにですよ?
私が言いたいのは、そんなことは考えなくてもいいから、上棟式本来の目的である「竣工後も建物が無事であることを祈願する」ことに神経を使ってください。
理由は、いくらお礼をもらったからと言っても作業が変わるわけではないからです。
もし「お礼ごとき」で家づくり作業が変わるような職人では、本当の意味での「職人」ではありません。
- 棟梁 1万円
- その他職人さん 5千円
- 帰りがけに赤飯やお茶菓子などのお土産を全員に渡す
こんなところでしょうか?
これとは別に、現場に行った時だけで構いませんので、お茶やコーヒーなどの差し入れを持っていって、現場の職人さんとコミュニケーションをとることのほうがよっぽど大切ですし、いい家造りをするためには必要なことかと思います。
現場で働く職人さんと裏で働く人々。現代の家を建てるためには大工さんだけではない大勢の人が関与しているということを平等に表現したものです。
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