このサイトは素敵な家造りを応援する、建築士による家造り情報ブログです
上棟時の大工さんへ渡す「お礼」って必要?

上棟時の大工さんへの「お礼」なんて考え方はもう無意味です。 その費用は他の事に使ってください。

上棟時の大工さんへ渡す「お礼」って必要?

上棟式と言う言葉の意味は、wikipediaにこのように書いてあります。

竣工後も建物が無事であるよう願って行われるもので、通常、などの基本構造が完成して棟木を上げるときに行われる。

式の方法や次第には神社祭祀のような規定はなく、地域による差異もある。屋上に祭壇を設けそこで祭祀を行うものや、祭壇のみ屋上に設けて祭祀は地上で行うもの、祭壇も祭祀も地上のものの区別もある。

wikipedeiaより引用

本来は建物の無事を願って行われる上棟式でしたが、一般的なお客様はこの言葉を聞くと、こんなことばかりに気がいってしまうのではないでしょうか?

お客様
差し入れはどうしましょ? 大工さんにお礼はいくら渡せばいいのかしら?
もしかして投げ餅とかもやらないと?
そうですね。昔から大工さんをねぎらう意味でも上棟式という儀式が行われてきましたから、お客様がそう思う気持ちも分かります。
また、全ての差し入れなどを否定するつもりはありません。やっぱり実際にお客様の顔をみて作業すると、どんな職人さんでも下手なことはできないはずですし、コミュニケーションを取る意味でも大切だと思います。
でもね、きっとあなたも思っているはずです。「お礼は結構バカにならない費用だな・・」ってね。
そうなんです。上棟時に大工さんが7-8人いたら、お礼のだけの総額でウン十万円になってしまう上棟時のお礼。
「ちょっとでも安くしたいけど、平均相場からかけ離れた金額のお礼を渡すのも失礼だし・・・」って思っていませんか?
お客様の気持を考えれば一生懸命にお礼の金額を調べるのもわからなくもないですが、30年近く住宅業に携わってきた私(建築士)が思うことは、
現代の住宅建築では上棟時に大工さんへのお礼を考えることは無意味」
ということです。
なぜなら、
上棟時に来た大工さんがあなたの家を完成させるためにそのままずっと作業するとは限らないし、昔の大工の仕事とはやることが大きく異なっているからです。
お客様
そうは言っても失礼になるかもしれないし・・・
そう思うのは、あなたが現代の住宅建築の裏側を知らないからです。最近の住宅業界の詳細を知れば、私の言う「お礼は無意味」の理由がご理解できるはずです。

効率化を考えて住宅を提供しなければ、会社が存続できない

現代の住宅産業では効率化を考えなければなりません。

何故か?

家を建てる人が減っているからです。

日本の人口はこれからどんどん減少し高齢化が進みます。人口が減少するということは必然的に家を建てる人も減るということです。

その少なくなった家を建てる人を、無数にある住宅会社が取合うわけです。そりゃもう住宅会社は必死です。

また、そんな中でも住宅会社を存続させなければなりませんから、必然的に業務の効率化を考えていかなければなりません。昔ながらのやり方で家を造っていては無駄が多いのです。

無駄が多くては住宅会社の利益率も悪くなり、強いては会社の存続にも影響が出てきます。

当然ですが、職人さんも減っています

人口が減るということは、住宅業界に携わる人間も減るっていうことです。さらに若い世代には不人気な職業である「職人仕事」は、そもそも「職人をやろう!」という若手も少ないのが現状です。
直接現場に携わっている私も思いますもの。
まだ手に職を付けていない若手がたくさんの給料を貰えるはずもなく、といって独り立ちできるほどの技術を身につけるには数年を要する職業です。さらに建築現場は汚い・危険・きついの3K職種です。
やる人間がいなくなって当たり前です。
こうなると、もう人間がやることを減らし、可能な限り機械化(工業化)していくしかありません。
ご存知の方もいるでしょうが、木造住宅の構造躯体はほぼプレカットです。昔みたいに大工さんが精巧な加工をして骨組みを作っている時代では無いんです。
まだあまり普及してはいませんが、外壁材のプレカット、断熱材のプレカット、電気配線のキット化、給排水配管材のキット化、これらのようにありとあらゆる部材が「効率化」の為に機械化(工業化)されてきています。
建築士
プレカットとは、現場ではなく専門の工場で長さをカットしたり、組み立てるための接合部までも加工しておくことを言います。現代では床合板や野地合板などのベニヤ類はもちろん、間柱や垂木、スジカイに至るまでの細かい木材までも工場でカットします。
大工さんが現場で木材をカットする割当はかなり少ないのです。

上棟時の大工の顔ぶれは昔と異なります

上記の理由で、住宅会社は効率化を考えます。
ゆえに可能な部材はすべてプレカット化します。
ぴったりにカットされたプレカット部材は高度な技術がなくても施工できます。(実際にはド素人にはできませんけど・・)
プレカット加工された木材
このような複雑な形状もプレカット加工される
よって、未熟でまだ完全ではない若い職人さんでも家を造れるっていうことになります。(すいません、極端な言い方ですが)
昔みたいに大工の親方の熟練な技を披露しなくても、立派な家は建つのです。
また、昔は一般的に親方とその弟子の二人とかで家一軒を完成させていました。当然ですが、その二人では上棟作業はできませんので、応援大工を呼んで上棟作業を行っていました。(会社によっては電気屋さんや水道屋さんなどの下職さんが手伝うこともあります)
でもですよ・・・
そもそも職人が少なってきているのですから応援を呼ぼうにも人が集まらないんです。呼んでも高齢な職人さんばかり。これでは施工スピードが遅くなっても仕方ありません。しかし、そのような遅い施工スピードを住宅会社が許すはずがありません。
同じ大きさの家でも3日かけて上棟するのと、6日かけて上棟するのでは年間に生産できる住宅棟数に倍の差があるのですからね。
でも動きの早い若い職人がいない・・・。
そこで、「より効率化するためのプレカット化に加えて、なにか解決策は無いのか?」と住宅会社は考えます。
その解決策として、比較的に高度な技術が必要のないプレカット材による上棟作業だけを行う「建て方大工」と、窓やドアをつけたり床を貼ったりする丁寧な仕事のできる「造作大工」とを分けて仕事を発注する、大工工事の分離発注を行う事が多くなってきました。

建て方専門大工とは?

上棟とは、「建て方」とか「建前」などと呼ぶこともあります。
建て方専門大工とは、この「上棟させるため」だけに現場に派遣される大工さんのことです。どこまで作業するかは住宅会社によって、屋根の下地まで造って上棟完了なのか、外壁合板まで施工して上棟完了とするのかは異なります。
上棟作業の光景
上棟作業の光景
しかし、共通して言えるのは、建て方専門大工は決して床を張りません。壁の下地材も張りません。窓やドアなんて一切とりつけません。作業日数にして3日~4日で仕事完了です。
で、その建て方専門大工さんが施工するのはプレカットされた木材です。これも大工さんが考えたものではありません。住宅会社の規定に則ったルールで図面化され、プレカット加工されたキットを組み立てるだけです。
極端に言えば、丸ノコと玄能が使える大工による「流れ作業」です。(建て方大工さん!ごめんなさい!)

上棟作業は大変な労力が必要です。足場を上に登ったり降りたり。重い木材を担いだり叩いたり。それは疲れる作業です。これはいくらプレカットされた木材でも同じです。

なり手が少ない職種で、重労働であるがゆえにある程度給料もいい、でも昔ほど熟練の技術がなくてもできる建て方大工になる人は、失礼な言い方ですが「稼ぐことが目的」の職人さんです。決して熟練の大工技術を身に着けようと志した職人さんではありません。

次から次へと家を上棟させ、年間に何十軒あるいは100軒以上もの家を上棟させる仕事をするのが「建て方専門大工」です。

重労働である建て方作業をどんどん作業ができる熟練ではない職人(時には外国からの研修生もいたりします)に数多く施工させて、表面の仕上げ部分はしっかりとした技術のある大工に工事を担当させる、これが現代の住宅建築です。

建築士
ハウスメーカー系ではほとんどがこの分離発注パターンです。工務店レベルでも年間に数多くの棟数をこなしている会社ほど、この分離発注パターンを採用しているはずです。職人が少なくなる今後は、ますますこの分離発注が多くなってくるはずです。

大工さんへのお礼が無意味だな?って思いませんか。

日本の住宅会社がすべてこの分離発注を行っているわけではありません。

でも少なくともプレカットはされているはずです。ということは、昔ほどの大工さんの仕事量では無いということです。

また、建て方専門大工でなく最後まで施工する大工さんが上棟を行うとしても、工場でプレカット加工されたキット木材を組み立てる作業が、現代で言う「上棟作業」なのです。

またまた失礼な言い方ですが、そのキット化された部材を組み立てるだけの上棟作業に、昔の大工さんほどの権威性はないのではないでしょうか?

 

あなたはすでに住宅会社と高額な建築工事を契約したはずです。その契約金額の中には当然現場で働く職人さんの給料も含まれます。もちろん上棟時の作業費も含まれています。

このような状況で、昔ほどの仕事もしていない権威性もない上棟大工に、契約金額とは別の「お礼」を考える必要なんてないでしょう。

そして、あまり目立ちませんが、あなたの家が上棟するまでに関わる人々は大工さんだけではない事を知っておく必要もあります。

「住宅を設計する設計士」、「お金関係を工面する営業担当者」、「上棟までの工程を組んだり材料を発注する現場監督」や、「高度なプレカット図面を作成するCADオペレーター」、「プレカット加工するために働いている工場スタッフ」、「それを現場まで運搬するトラックの運転手」、などなどこれら多数の裏方さんがいることを忘れてはいけません。裏では大勢のスタッフがあなたの家づくりに関係しているのです。

上棟とは、上棟時に現場にいる大工職人さんだけの仕事ではないのです。

 

  • 上棟作業だけを行う建て方専門大工の場合がある
  • 大工が木材を加工していた昔とは異なり、現代の構造躯体はプレカット加工されたキット部材である
  • 上棟の作業をする為には、現場にいない大勢の裏方スタッフが関与している。むしろ現代の大工さんは現場で作業するだけの職人です
  • あなたはすでに家を建てるための金額を払って契約している。その金額内に大工さんの給料は含まれている

 

お礼はどうしたらいいですか?と住宅会社さんに聞くと明確な回答が帰ってこない場合があるはずです。そりゃ誰でもお金をもらって嬉しくないはずがありませんからね。

しかし、上記の3つのポイントを考えれば、自ずと回答は出るはずです。

 

それでもあなたは「上棟する為だけに現場に来る大工」に、ましてや「キット化された木材を組み立てるだけの大工」にお礼を払いますか?

そんなことは考えなくてもいいですから、上棟式本来の目的である「竣工後も建物が無事であることを祈願する」ことに神経を使ってください。

 

建築士
この記事で述べた状況でない場合でも、「上棟時のお礼は必要ない」と私は考えます(お茶菓子等の差し入れはしてください)。
理由は、いくらお礼をもらったからと言っても作業が変わるわけではないからです。
もし「お礼ごとき」で家づくり作業が変わるような職人では、本当の意味での「職人」ではありません。
※最近ではほとんど見かけませんが、個人の大工さんに家づくりを発注する場合は例外です。親方と弟子がいるはずです。
※今回の記事は大工さん、建て方大工さんを軽蔑しているわけではありません。
現場で働く職人さんと裏で働く人々。現代の家を建てるためには大工さんだけではない大勢の人が関与しているということを平等に表現したものです。

 

 

 

上棟時の大工さんへ渡す「お礼」って必要?
最新情報をチェックしよう!