巷では「ウッドショック」という言葉が飛び交っています。
「どうも!○○さん! どうですか木材は?」
「いや〜どうにもならんね」
こんな会話が毎日の挨拶代わりになってきました。
[sitecard subtitle=関連記事 url= https://archikoto.com/madori/uddosyokku=]
一般の方はイマイチこんな言葉がピンと来ないかもしれません。
先週、Yahooニュースにちょびっと掲載された事と、テレビニュースでちらっと流れたくらい・・・
住宅関係者、プレカット業者、木材業者はみんなヒヤヒヤ(イライラ)しています。
この先どうなるんだろうか?
お施主様におもて立って言うのもなんだし、30坪くらいの住宅でも「木材価格が100万円近く高騰している」なんて言えないし。
今は頑張ってコチラが負担するしか無い・・・
実際の現場はどう?
幸いにも私の関係する現場では、今現在の木材の滞りはありません。
でも、同じ市内では、すでに木材が来ないが為に施工が止まってしまっている現場があります。
住宅会社もそうだけど、何よりマイホームの完成を楽しみにしているお客様のことを思うと辛くて仕方ありません。
大きな倉庫などを抱え、常時それなりの資材を置いてある工務店では、なんとかそれら資材をやりくりして急場しのぎができるかもしれません。
しかし、備蓄能力のない工務店では、自分たちの抱えている木材でのやりくりさえもできません。
自分たちが潤っているなら、
「どうぞ、この木材をご使用ください」
と言って、助け船をだしてあげたいくらいですが、いずれ自分たちも同じ立場になるかもしれない現状では、そんなことはできません。
こっちの住宅会社の現場が止まったらしいぞ。こんどはあっちの会社だ・・・。
そんな会話、したくありません。
プレカット会社が悪いわけじゃない
チラッとこんな言葉を小耳にはさみました。
「まったく・・・プレカット会社の奴ら何してんだ!」
こういう発言をする方は、全くもって今回のウッドショック問題の原因を理解していません。
今回の問題の一番の根底にあるのは「コロナウイルス」。
これが原因です。
コレから副作用的に「世界中が木材不足に嘆く現在」を造ってしまった。
プレカット会社が悪いわけじゃない。
確かに、日本の住宅の構造材のほとんどはプレカット会社で加工され出荷されるものです。
だからと言って、プレカット会社が悪いわけじゃない。
実は、去年の秋ぐらいから木材の高騰などの動きは見えていた。
しかしほとんどの人が「値上げなんて付き合えないな」と言って見向きもしなかった。
2~3月くらいには、春以降にヤバくなるかも?と騒がれだし、そのときにプレカット会社は各住宅会社に案内を出し、材料値上げの協力の打診をしていたのに誰も何もしない。
そのときに、とあるA住宅会社のおエライさんはこのように言ったそうです。
「お前何言ってるんだ?木材なんてなくなるわけ無いだろ!そんなことで値上げの話を持ってきて!もういいわ、お前(プレカット会社)とは付き合わん!」
その時に、そのプレカット会社の担当者Bさんと私は話をしました。
「ああいう風に言われたから、こっちもA住宅会社との取引をやめるようにしました」と。
それからしばらく経って、そのプレカット会社の担当者BさんにA住宅会社から電話が来たそうです。
「あの時はすまなかった・・。本当に木材が手に入らん。また取引を再開してくれないか?」
当然ですが、プレカット会社の担当者Bさんは、すんなりとOKの返事を出すわけがありません。
もう、この住宅会社は火の車ですよ。
現在この会社がどうなっているかは、ご想像におまかせしますがね。
日本政府は何をしているのか?
「ウエアーハウザー」のニュースレターに並ぶ見出しが、終わりの見えない終息を感じさせる。
- 高騰続ける北米市場-歴史的な記録更新
- 混雑が継続している米国西海岸港湾
- 米国住宅着工棟数右肩上がり
- 日本新設住宅着工件数 1.5%減(R3年3月)
「ウエアーハウザー」とは、森林の育成と伐採・建築用資材の森林製品の製造流通及び販売を主な業務としている国際的な森林企業だ。
その会社が出しているニュースレターに並ぶ見出しが、なんとも悔しくて仕方がない。
私は、別にアメリカが悪いわけでも無いと思う。
コロナによって受けたダメージを挽回するために、そして自国の経済を回すために、アメリカ政府が自国を守るためにやっていることが今の好景気につながっている。
アメリカだってコロナの被害を受けているんだ。政府が自国を守るのは当たり前のこと。
中国だって同じ。
いち早くコロナ脱却を声明し、イケイケバンバンな状態に持っていくのも経済を回すためには至極当然なコト。
ふと、自分の国 「JAPAN」を見てみるとどうだろうか?
ウッドショックがニュースでもあまり騒がれない事から想像するに、東京オリンピック問題やワクチン問題、感染者が一向に減らない現状と、ウッドショックどころではないのが実情といったところなのか?
前総理大臣ならまだしも、現総理大臣のリーダーシップが問われている、今の日本。
アメリカや中国がイケイケ状態になっている時に、そのアオリを受けている日本の現状は、総理の目にははどう映っているのだろうか?
私はコロナに対する日本の対策について、とやかく言う身分では無い。
しかし、先程書いた「とあるA住宅会社のおエライさん」のように、リーダーが誤った判断をしてしまうと、こうも被害は大きくなってしまうというのを、いろいろなところで実感してしまう。
かなりの長期戦の様相・・・
日刊木材新聞にとあるプレカット会社の記事が載っていた。
「6月下旬には品不足は解消の見通し」
最近の関係者の話によれば、どうもこの記事のようにはならないようだ。
希望的観測で書いたような記事なのかもしれない。
今日、私のところにプレカット会社から届いたメールには「暗い内容」しか書いていなかった。
- ヨーロッパ材の7月以降の入荷は更にタイトに
- 毎週$100づつ上昇
- コンテナ不足により、1~2月入港予定だった分が4~5月に入港している
- ラミナの入港状況は通常の50%減となっている
6月には解消するなんて記事はデタラメなのは明らか。
このままでは、オリンピックどころか本当に日本の経済がダメになる。
国産材関係者の話では、そうは言っても「いずれ終息するウッドショック問題」に対応するために、増産するかどうか様子を伺っているよう。
そりゃそうだ。
今まで安い外材にばっかり目を向けなかった先程のA住宅会社さんのように、今は飛びつくように購入してくれても、いつ目を逸らされるかわかったもんじゃないから。
もうこうなると改善の見通しは見えないのが現状。
住宅関係者は体力勝負
高騰した木材問題に対して、どこの住宅会社も工務店も相手の出方を伺っている。
「当社は値上げしま~す!」
と言った矢先にウッドショック問題が改善してきたら、高い価格の住宅会社に注文を出すお客様なんていないだろう。
即座に「値下げしま~す!」なんて言ってたら、そんなコロコロ変わる会社なんて、あてにならないと見られてしまう。
今の所は「木材価格が高値安定するのではないか?」と言われているけど、その状況がほぼ確定するまではどの会社も木材高騰分は自社で負担し耐えしのぐはず。
供給量が激減している現状では上棟や引き渡しがままならず、思うように資金繰りが回らなくなる。自社で負担した木材高騰分と合わさると、体力のない工務店は本当にヤバいかもしれない。
その前に中堅のプレカット会社もヒヤヒヤもののハズ。高額なプレカット機械や工場などの固定費は変わらずに毎月かかるわけだから、製造したプレカット材で入金がなければコチラも体力勝負となるのかもしれない。
体力勝負なのは職人さんだって同じ。
木材が無いから上棟できないというのは何も大工さんだけの問題じゃない。
キッチンを施工しようにもクロスを張ろうにも、エアコンを取り付けようにも「家」がなければ話にならない。
当然、それら職人さんも仕事がない。
蓄えの乏しい職人さんでは、食っていく為に仕事を変えなければならない人が出るかもしれない。
設計士だって同じ。
スムーズに設計から建築に移行できなければ、どこかで滞る。設計だけしたって建築しなければ「ただ紙に書いた絵」だから。
コロナで観光業や飲食業の方が大変な思いをされている。
今までは我々住宅産業関係はそれほど打撃は無かった。
辛く耐えしのぐ産業に、住宅関係産業が仲間入りするのは、もうすぐそこに来ているのかもしれない。
コロナで亡くなってしまう方が増えている日本。コロナで産業が衰退する日本。
コロナが憎くて仕方がない。
数カ月後には「改善したぞ!」って記事が書けることを祈るばかり。
コメント