木造住宅が上棟したら、次に行う工事は屋根工事です(同時に大工さんの工事も進みます)
木造住宅は雨が降っても大丈夫なように、可能な限り早く雨仕舞を施工することが大切です。
上棟したその日の夕方もしくは翌日にルーフィング(屋根の防水シート)を施工し、順次屋根材を施工して行くのが一般的です。
ではその木造住宅の屋根工事を見てみましょう。
屋根工事の初めはルーフィング施工から
屋根の下地材(野地板または野地合板)が施工されたら速やかにルーフィングを施工します。
この下地材の上に直接、屋根材(瓦など)を施工すると屋根材の隙間から雨水が侵入してしまいますから、屋根全体の防水性能を確保するためにもルーフィングの施工は大切です。雨が降る前に速やかにルーフィングが施工されるのが一番いいですが、何かしらの理由ですぐにルーフィングが施工できない場合はブルーシートなどで屋根全体を覆うなどの対策が必要です。
このルーフィングですが、ただ敷き込めばいいってものではありません。ルーフィングの幅は約90cmですから一枚一枚を重ねて施工します。その重ね幅が重要です。
上の図のように縦方向の重ね幅は100mm以上、横方向の重ね幅は200mm以上必要です。これよりも少ないと万が一瓦の下に雨水が入った場合にルーフィングの継ぎ目から雨水が侵入してしまうことになります。このルーフィングはタッカー(例えて言うならばホッチキスの大きいものです)などで留め付けるのが一般的です。
また屋根が壁にぶつかるようなところでも、そのルーフィングの施工は重要です。
この写真のように壁面までルーフィングを張り伸ばして(300mm以上)おかないと雨漏りにつながりかねません。
アスファルトルーフィングとは?
上記の図の中には「アスファルトルーフィング」と書いてあります。またその上の施工写真に写っているルーフィング(グレー色のシート)には「改質アスファルトルーフィング」と書かれているのがわかるでしょうか?(写真では字が上下逆に写っていますが・・)
どちらの言葉にも「アスファルト」とありますが、アスファルトってどういうこと? って思いますよね。
このシートはその名前の通り主材がアスファルトです。シート状の紙にアスファルトを染み込ませて造られています。
アスファルトとは原油から造られている石油生成品です。アスファルトは50度以上のような高温になると柔らかくなり、逆に10度以下の低温では固くなります。屋外にさらされている屋根ではこの高温から低温になるのが繰り返されています。その変化のたびに徐々にルーフィング自体の劣化が進み、ヒビなどが発生して防水性能が劣化していきます。
その一般的なアスファルトルーフィングの耐用年数は10年と言われています。
そうですね。
家を雨から守ってくれる屋根の防水材が、たった10年しか持たないのでは心もとないですよね。そこで、このイマイチな耐用年数を改善したものが「改質アスファルトルーフィング」と呼ばれるものです。
改質アスファルトルーフィングは、「改質ゴムアスファルトルーフィング」や略して「ゴムアス」とも呼ばれますが同じ物です。アスファルトにゴムや合成樹脂やポリマーなどを混ぜて耐久性を高めたものが改質アスファルトルーフィングです。この改質アスファルトルーフィングの耐用年数は一般的に20年となっています。
屋根材自体の耐用年数よりも防水シートの耐用年数のほうが短いのはあまりオススメしません。というのは屋根のメンテナンスリフォームの時期に関わるからですが、まだ屋根材自体は問題ないのに防水材の寿命が先にくるようでは、屋根材を剥がしてからメンテナンスリフォームを施工することになります。これはもったいないですし、費用の面で大きな損失です。
表面に見えなくなる防水下地材もしっかりしたものを選びたいものですね。
屋根材の種類
屋根材には様々なものがあります。
- 陶器瓦
- セメント瓦
- 素焼き瓦
- いぶし瓦
- ガルバニウム鋼板
- スレート瓦(カラーベスト)
- アスファルトシングル
他にもまだまだたくさんの屋根材がありますが、上記のものが住宅には一般的でしょう。
屋根材には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
耐久性 | 重量 | メンテナンス度 | 新築時のコスト | オススメな建物 | |
陶器瓦 | ◎ | △ | 破損しない限り不要 | ○(価格帯が広い) | 和風、洋風、なんでも |
ガルバニウム鋼板 | ○ | ◎ | 概ね20年ごとに | ◎ | モダンな建物 |
スレート瓦(カラーベスト) | △ | ◎ | 概ね10〜15年ごとに | ○ | シンプルな建物 |
陶器瓦のデメリットは重量があることですが、それ以外の部分では他の屋根材よりも優れたポイントが多い材料です。また瓦の形状も丸いものから平らなものまで様々なものがあり、価格帯も幅広くありますから家のの形状やコストに合わせて選ぶことができます。
ガルバニウム鋼板を選ぶメリットは、やはりその軽さとスッキリした形状でしょう。モダンなスッキリした外観にとても良く似合います。
では、日本の住宅に一番多いであろう「陶器瓦」について説明します。
陶器瓦
陶器瓦とは表面に釉薬を塗ってから焼き上げたものです。お茶碗と同じ工程の作り方ですね。
瓦の中ではもっとも一般的であり、表面の艶があって耐用年数(50年くらいは問題ない)も長く耐水性にも優れた屋根材です。
陶器瓦には様々な形状ものがあります。S型やJ型(和風)F型(平板)などがありますから家の雰囲気に合わせて選べば良いでしょう。
次は実際に陶器瓦の施工風景を見てみましょう。
陶器瓦の施工
陶器瓦は昔は「土葺き工法」と呼ばれる施工方法が用いられていました。葺き土の上に瓦をのせて土と瓦がくっつくことによって固定する方法です。しかしこの工法では土の分がさらに重量がのしてしまうことと、経年劣化によってメンテナンスが必要になることで今ではほとんど施工されない工法となっています。
では、現代の陶器瓦の施工方法はどのようなやり方が一般的かというと、「引掛け桟瓦葺き工法」と呼ばれる方法が一般的です。
この写真に写っている桟木(緑色の棒の部材)に瓦の裏側にある爪を引っ掛けて、瓦に空いている釘穴から釘を打ち付けて固定する方法です。土葺き工法に比べ重量が軽くなりますから現代では一般的な陶器瓦の施工法です。
で、この写真を見てください。
矢印で示したところに突起があるのがわかるでしょうか?
この突起は全ての陶器瓦にあるわけではありません。防災瓦とか呼ばれたりしますが、この突起部分で瓦が隣の瓦を押さえつけることによって耐震と耐風性能を高めた瓦にある突起です。
たったこれだけの突起ですが、瓦全体がつながったような状態になりますから、耐震や耐風性能にこだわりがある方にオススメな商品です。様々なメーカーから同様な商品が販売されていますが、今回施工した瓦材は栄四郎瓦㈱のLL40という商品です。
屋根は家を雨から守る重要な部位
当たり前ですが、雨は上から降ってきます。その上から降ってくる雨を初めに受け止めるのは屋根です。屋根がなければ家はびしょ濡れです。
また屋根があっても、その施工が守られていないようでは隙間からの雨漏りにつながってしまいます。
容易に登れない、点検できない場所である「屋根」。でも長持ちする家のためには重要な部位ですからコストダウンせず、しっかりした施工で行いたいものですね。
私も幾度となく怖い思いをしました。
気になる場合は、住宅会社さんに写真提出を求めて確認しましょうね。
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