木造住宅の工程 壁と天井へのウレタンフォーム吹付け断熱材の施工は注意ポイントだらけです。 

こんにちは。建築士のmakotoです。

先日、木造住宅の現場で壁・天井へ断熱材を施工しました。この物件の断熱材の材料は硬質ウレタンフォームの吹き付けです。

一般的に広く普及している「グラスウール断熱」ではなく、「硬質ウレタンフォームの吹付け断熱」です。

お客様
「硬質ウレタンフォーム」って言葉を聞くと、断熱性能がすごく高そう!
建築士
お客様! そのお気持ちはある意味あってますが、他の断熱材に比べて「ウレタンフォーム」が特別に断熱性能が高いというわけではありませんのでお間違いないようにお願いします。
ええっ?
じゃあなんで一般的なグラスウールでなく、わざわざ硬質ウレタンフォームの吹付け断熱を施工したの?
って思いますよね。
ぶっちゃけ、私は「断熱材の素材ってどれでもいい」と、思います。
「正しい施工方法であれば」、ですが。
でも私は、硬質ウレタンフォームの吹付け断熱は素材の断熱性能の高さではない別の理由で、この断熱施工方法を指名選択する理由があると思います。
それは、
「気密性の高さ」
です。
というのは、高性能な断熱性能の素材でも、気密性能が低ければ断熱性能は極端に低下するからです。よって住宅の断熱材の施工は、どの素材であっても「隙間なく」施工し、気密性を高めるのが重要です。
建築士
住宅の気密性とは、どれだけ隙間がない家か? ということです。
隙間がある家では、いわゆる「隙間風が多い家」ということになり、どんなに高性能な断熱材を使用してもより良い断熱性は期待できません。
この断熱性能の確保にとって重要な気密性を確実に(施工する職人の技術レベルによりますが)そして容易に実現するのが、硬質ウレタンフォーム吹付け断熱であるのです。
また、吹付け断熱の注意ポイントを知らないで施工すると、問題だらけの断熱施工となってしまうので注意が必要でもあります。
では、実際の施工風景を見ながら、硬質ウレタンフォーム吹付け断熱を選択する理由(気密性能の高さ)と、この断熱材であるがゆえの施工上の注意事項も解説していきます。
目次

硬質ウレタンフォームの吹付け施工前には「事前準備」がいろいろと必要!

グラウウールやロックウールなどの断熱材は、壁の中に部材を充填して施工します。柱と間柱の間の空間にグラスウールを充填させ、部材の耳の部分を正面からタッカーで留め付けて固定する感じですね。

こういった断熱材とは違い、硬質ウレタンフォームの吹付けというのは、文字通り「断熱材を吹き付けて」施工します。

お客様
ただ「断熱材をタッカーで留め付ける」か、「吹き付ける」かの違いじゃないの?
確かにそのとおりですが、吹付け断熱ではグラスウール断熱とは若干異なる「事前準備」が必要なのです。
それは、
  • 電気配線に対する準備
  • 壁固定物に対する準備

これが必要であり重要です。

電気配線の事前準備とは?

電気配線の事前準備とは何か? というと、下記の2点があります。

吹付け断熱材の施工前に電気配線を確実に完了させておく

 

吹付け断熱を施工したあとでは、配線のやり直しと電気配線の追加施工は難しい為、確実に電気配線を完了させておく必要があります

電気配線も壁の中に電線を這わして施工します。吹付け断熱はこの壁の中を隙間なく埋める断熱施工であり、あとから断熱材を剥がして施工を直すことは難しいです。実際にはカッターなどで断熱材をカットすることはできますが、それではせっかく隙間なく吹き付けた断熱材に欠損ができてしまいます。

隙間なく施工されたウレタンフォーム吹付け施工。配線を通す「隙間」さえ無い

ゆえに壁の中の断熱材に埋もれる電気配線は、あとから追加施工が無いように完璧に電気配線を完了させておく必要があるのです。(給排水などの配管も同様です)

建築士
吹付け断熱の施工マニュアルでも先行配線を推奨しています。
グラスウール断熱では、断熱材がタッカーで留まっているだけですので、壁下地の石膏ボードを張る前であり、防湿フィルムに気をつければ追加配線も配線の修正も容易に施工可能です。

通信ケーブルへの注意事項がある

これについては、日本電線工業会のホームページに記載があります。

近年、通信ケーブル(TV用同軸ケーブル、電話用ケーブル等)を配線施工後に、発泡ウレタン等の断熱材を直接ケーブルに吹き付けた場合、断熱材の種類や施工状況にもよりますが、反応熱による絶縁体の溶融と推定されるケーブル内部導体の偏り、或いは導体の露出による通信障害の事例が報告されています。従いまして、あらかじめ通信ケーブルを電線管等に入れるなどして、断熱材が通信ケーブルに直接吹き付けられないように安全側の施工をお願いします

日本電線工業会ホームページより引用

つまり、グラスウールなどの断熱材ではあまり配慮する必要のない電気配線に、上記の理由により吹付け断熱施工の場合では一定の配慮をして電気配線をする必要があるということです。同じ配線方法で施工すると、あとからテレビの映りが悪いなどの問題が起こる可能性があるのです。

対策として「CD管などの空配管内へ通信ケーブルを配線し、配線が直接発泡ウレタンに触れないにする」などがあります。

発泡ウレタン吹付け断熱材による電線への影響がある

断熱材ですので、当たり前ですが熱を通しにくい素材です。また電線は電気が通ることにより少なからず発熱します。

ということは、断熱材に隙間なく埋もれた配線が発熱した場合では「熱の逃げ場がない」ということになります。これにより電線の許容電流の低下などが懸念されるのです。

また先程述べた通信ケーブルと同じく、電線のVVFケーブルへも化学的影響が少なからずあります。

これについても詳しくは「日本電線工業会のホームページ」に記載がありますので気になる方はチェックしてみてください。

電線も先程の通信ケーブルと同じように配管内へ電線を通すなどの対策が必要です。

配管内に電線を施工した状況

 

壁固定物に対する事前準備とは?

住宅には壁に固定する部材は数多くあります。たとえばカウンターや吊り戸棚、階段や手摺などが当てはまりますね。

これらを壁に確実に固定するためには木材などのしっかりした下地が必要です。当然、硬質ウレタンフォームや壁下地材の石膏ボードでは十分な固定耐力は期待できません。

ゆえに、硬質ウレタンフォームを吹き付ける前に、壁固定物を取り付ける為の下地の施工を確実に完了させておく必要があります。下地がなかったからといって発泡ウレタンを切って(剥がして)下地の木材を入れ込むなどという行為は、断熱性能を欠損させ、気密性能の低下さえも招き兼ねないことです。

硬質ウレタンフォーム吹付け断熱の施工前には、必要な下地材を確実に壁内に設置しましょう。

ウレタンフォーム内に埋め込まれた下地木材

隙間のない断熱材の施工には技術が必要

硬質ウレタンフォームの吹付け断熱は、「隙間なく」断熱材を吹き付けます。

この「隙間なく」というのがポイントです。

冒頭で述べた硬質ウレタンフォームの吹付け断熱を選択する理由である「気密性能の高さ」も、「隙間なく」断熱材を吹き付けるがゆえに実現するのです。

グラスウール系の断熱材でも隙間なく施工すればいいのですが・・・

このグラスウール断熱の施工風景を見てみてください。

隙間だらけのグラスウール断熱材施工状況

一見すると、ギュウギュウにグラウウール断熱材が施工されていると思うかもしれません。しかし、この施工状況では隙間だらけなのです。

グラウウールでは、室内側にあるビニールが防湿フィルムの役目を果たしています。このビニールを連続させる(当然、わたわたの物も無ければダメです)ことによって隙間のない断熱層となります。

上記の写真では、左上部分にビニールがない部分があり、また右側の断熱材も左右のビニール同士がつながって(被せて)施工されていません。これでは隙間が出来てしまっているのです。

これを家中全てで隙間なく連続させるのはけっこう大変です(知識があり技術がある職人であれば大丈夫ですが)

高性能グラスウール「アクリア」施工マニュアルより引用

吹付け断熱では「隙間」がほぼない

壁の中に吹き付けるウレタンフォームは、モコモコって膨らんで発泡することにより隙間がなくなります。よって壁内には隙間がなくなります。

さらにグラスウール系の断熱材では施工できない小さい隙間でさえも、断熱材を吹き付けることにより隙間をなくします。

小さい隙間も確実に埋める

天井(または屋根)の「隙間」も無くす

グラスウール系の断熱材を天井に施工する場合は、断熱材とは別に防湿フィルムを石膏ボード下地に施工する必要があります。これも結構大変です。

しかし、吹付け断熱では壁と同様に隙間なく屋根面に吹き付けますから、確実に隙間はなくなります。

屋根面に吹き付けたウレタンフォーム。隙間はない

しかし、屋根面には断熱吹付け前にやらなければならないものがあります。

それは、通気層を作ること。

屋根直下の熱い空気を逃がす「通り道」を作るのです。この「通り道」は室内には通じていません。外気に通じています。

屋根下に通気層を作る

天井の電気配線が断熱材に埋もれない配慮も必要

先程述べた、断熱材に直接電線が触れないように電線を空管に通して配線する方法は、当然コストがかかります。材料費も施工費もかかります。

よって、空配管を使用しなくても直接電線が断熱材に触れないように配線できればそれに越したことはありません。

壁の中では空配管する他に方法は有りませんが、天井は別の方法があります。

それは、電線を吊り下げる方法です。

ワイヤーで電線を吊り下げた配線

このように施工すれば、電線が直接断熱材に触れないで配線できます。

建築士
こういうところまで配慮できない住宅会社(現場監督)では、「ヤベぇ!断熱材で電線を埋めちゃった!」なんてことが起こります。

ノウハウがなければ問題が起こる

以上、硬質ウレタンフォーム吹付け断熱の施工風景を見ていただきました。

グラスウールでも正しい施工方法の知識は必要です。しかし、硬質ウレタンフォームの吹付け断熱では、それ以上のノウハウと確実な施工技術がなければ問題がある断熱施工となってしまいます。

グラスウールなどでは、石膏ボードなどで壁や天井を塞ぐ前であれば修正が効きますが、吹付け断熱ではそうはいきません。

硬質ウレタンフォームの吹付けを検討している方は、ノウハウのある住宅会社に依頼したほうが無難です。初めて施工する住宅会社(または現場監督)では、まぁだいたい問題が起こるでしょうね。

でも、確実な施工をした硬質ウレタンフォームでは、気密性の高い満足できる断熱性能が発揮できますから、より良い省エネ性能の高い住宅が手に入ります。

最後にちょっとだけ

この記事の一番最初に、「硬質ウレタンフォームの断熱性能が他の素材に比べて高いわけではない」といいました。その根拠を説明します。

硬質ウレタンフォームの施工シェア№1と言われている?(実施にはわかりませんが)アクアフォームの熱伝導率は0.036W/(m・k)です。

一方、高性能グラスウールである旭ファイバーグラスのアクリアネクストの熱伝導率は0.038W/(m・k)です。

まぁ、ほとんど一緒ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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