住宅の基礎工事中には鉄筋の配筋検査という重要な検査があります。
この配筋検査というのは、一言でいうと「設計図どおりに鉄筋が組まれているか?」 をチェックする検査です。
その「設計図通り」という言葉の中には、「基礎伏図や配置図などの図面どおり」という意味と「基礎鉄筋配筋仕様書のとおり」という意味がありますが、コンクリートの中に埋まってしまう鉄筋は、この段階でしっかりと検査し、マズイ部分はこの時点で修正しないとあとからでは対応できません。
よって家を建てるお客様にとっても、現場監督や配筋を検査する検査官にとっても、家造りにとって重要な工程の節目の一つです。
そして、検査官はこの配筋検査で、現場監督とは違う目線で鉄筋をみて配筋をチェックします。
どういった部分を検査官が見ているのかを知れば、お客様でも「ある程度」セルフチェックできると思いますので、後悔しない家造りのためにも参考にしてみてください。
※この記事に書いてあるポイントは日々検査官として仕事している私の主観です。検査官によって見るポイントは細かいところで多少違うかもしれませんが、どの検査官でも概ね同じような事を見ているはずです。
配筋検査時に現場に到着してまず見るポイント
検査官である私が、まず現場に到着して見るポイントは「全景」です。
全景とは、「住宅の基礎配筋が完了した全体の光景を見る」ことを言います。
全景を見て何を感じているのか? それは、
「美しさ」です。
う~ん! 鉄筋ってなんて美しいんだろう! っていう意味ではありません。
基礎の鉄筋は決められた太さのものを同一間隔で並べます。ゆえにちょっとでも間隔が違ったりすると、全景がきれいに見えません。逆に整然と同一間隔で並べられた配筋は一目見ただけでも「綺麗だ!」 と思える美しさがあります。
そしてだらしなく並べられた配筋状況では、だいたいどこかに不具合があります。また綺麗に並べられた美しい配筋の現場は、おおむね細かいところでも美しく施工されているものです。
次に鉄筋の細かい部分をチェックします
検査官がチェックするポイントは項目が多いですが、大まかなチェックポイントを書くとこんな感じです。
- 使われている鉄筋は適切か?(太さ、形状など)
- 鉄筋の配置ピッチは設計図通りか?
- 鉄筋の継ぎ手は適切に施工されているか?
- 鉄筋の定着長さは問題ないか?
- 図面に記載してある補強筋はしっかり施工されているか?
- 鉄筋のかぶり厚さは確保されているか?
- 人通口などの開口部の位置と補強筋が図面どおり施工されているか?
- 基礎を配管が貫通する部分(スリーブ)には補強筋が施工されているか?
以上が鉄筋に関するチェックポイントで、その他チェックポイントは下記の項目です。
- ホールダウン金物用のアンカーボルトがある場合の位置と太さは指示通りか?
- アンカーボルトは適切に配置されるか? (専用固定金具で型枠に固定する事が望ましい)
- 通り芯はずれていないか?
- 図面通りの建物配置寸法か?
- 床下換気口がある場合は、換気口の位置は正しいか?(基礎パッキン工法の場合は不要)
細かく書けばもっとたくさんのポイントがありますが、概ねこんな感じです。
すべての現場監督さんが当てはまるとは言いませんが、この見方の違いが「確実な配筋検査」につながります。
現代の住宅では「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により、10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。これに伴い住宅保証に加盟するわけですが、その保証機構が定める住宅仕様に則り住宅というのは造られていきます。基礎に関しても細かい仕様が決められており、その仕様に基づいて施工されているかの検査の一つが「配筋検査」にあたります。
よって、配筋検査時に誰かしら(住宅会社では検査の資格をもった社員が行う場合もある)の検査員が上記のような検査をします。この配筋検査時に不具合が見つかれば、不具合部分を是正しない限りそれ以降の工事は進行できません。
よって、この鉄筋の施工から検査までの仕組みが機能している限り、問題のない住宅基礎が施工されるはずです。
とは言っても、お客様とすれば「本当にウチの基礎は大丈夫だろうか?」とか、「後で確認できない鉄筋はしっかり基準を守られて施工しているんだろうか?」といった不安はあるはずです。
基本的には、あなたのマイホーム建築を依頼した住宅会社なり建築士を信頼してください、としか言えませんが、どうしても気になる方は下記の記事を参考にお客様自らチェックしてみてください。
この記事に書いてあるポイントが守られている配筋であれば、お客様がわからない細かい部分も問題のない配筋が概ねできていると判断してもいいのではないでしょうか。(細かい部分は検査官がチェックします)
配筋検査に合格すればコンクリートを打設します
少しでもマズイポイントがあれば、現場監督と職人さんに是正指示が出されます。
材料がその場にあればすぐに治せるでしょうが、「現場に材料がない」あるいは「取り寄せないと材料がない」という場合には、コンクリート打設まで工事が進まないこともあります。
お客様としては、「コンクリートを早く打設しないの?」という、もどかしい時間になってしまいますが、なにせ、後からではコンクリートの中の鉄筋の是正はできません。
熟練した職人でも失敗はゼロではありません。現場監督も間違えることがあるかもしれません。だから第三者の検査官が見てダブルチェックあるいはトリプルチェックを行うのです。
よって是正工事があった場合でも、「是正できる今、不具合を発見できてよかった!」くらいの気持ちでいなければダメです。
最後に余談ですが、下記の整然と並べられた鉄筋は「アート作品」と呼んでもいい美しさがあると思いません?
ん?私だけ?
今回の記事は以上です。次は「スラブにコンクリートを打設する」です。
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