新築住宅の工程で、内装の仕上材である壁紙のクロスを施工する前は、このような状態になります。
この物件の壁は、なにやらピンク色で華やかな状態に見えますが、なにもピンク色好きだからピンクなのではありません。
このピンク色の部材も、あくまで壁下地材の一種である「石膏ボード」なのです。
これは、吉野石膏の「ハイクリンボード」と呼ばれる、ホルムアルデヒドを吸収してくれる機能をもった石膏ボードです。
昔の石膏ボードといえば薄い黄色いものが一般的でした。しかし、近年の住宅会社ではこのハイクリンボードを多数採用しています。
しかし、今回説明する、ちょっと変わった石膏ボードはあまり採用していないと思います。
この物件に施工された石膏ボードに近寄った写真をよく見てみてください。
なにやら不思議な模様が規則正しく印字されています。
この記事では、何の為に規則正しい印が印字されているか?を解説します。
石膏ボードにある印は何のため?
この印が印字された石膏ボードの名称は、「タイガーピッチボード」と言います。
この名称を聞いてピンときた方はいるでしょうか?
名称のとおり、石膏ボードを留め付けるビスのピッチを印字してあるのです。
印字してあるところを狙ってビスを施工していけば、規則正しい間違いのない間隔でビスが施工できるというわけです。
では、なんの為に規則正しく施工する必要があるのか?
確かに不揃いの間隔で施工されたビスよりも、規則正しく並んだビスの方がきれいに見えますね。
でも、そんな理由ではないのです。
答えは、「省令準耐火仕様で決められているビス間隔を確実に施工するため」なのです。
省令準耐火仕様とは?
省令準耐火仕様も近年の木造住宅では当たり前になりつつあります。
そもそも省令準耐火仕様とは、建築基準法で定められた準耐火構造に準ずる耐火性能をもたせた住宅の仕様を言います。
誤解のないように追加しておくと、建築基準法の準耐火構造とは異なります。あくまで住宅金融支援機構が定める構造に合致する構造の住宅のことを言います。
ものすごく簡単にいうと、「隣の家の火災から火をもらわない・万が一火災が発生してもその部屋から一定時間は火を出さない」という火災に対して安全性の高い住宅ってことです。
この省令準耐火仕様で建築することによって、鉄骨造と同じ火災保険の構造別階級区分となり、火災保険料が安くなるメリットもあります。
詳しくは日本木造住宅産業協会のホームページを参照してください。
省令準耐火仕様で定める仕様とは?
鉄骨造と同じ火災保険上の区分となるわけですから、その仕様は細かく規定され、仕様を守って施工された建物でなければ認められません。
外部からの延焼に強くする為には、住宅の外部の仕様も火災に強い仕様にしなければなりませんし、室内の仕様も火災に耐える仕様にしなければなりません。
その膨大にある仕様の中のひとつに、石膏ボードのビスピッチも規定されているのです。
省令準耐火仕様の石膏ボードビスピッチは?
省令準耐火仕様で定められる石膏ボードを留め付ける為のビスピッチは150mmです。これよりもビス間隔が広い場合は不合格となります。
現場の大工さんはこの間隔を守ってビスを施工していかなければなりません。
しかし、考えてもみてください。
なんにも書いていない、印もなにもないところに、あなたは正確に150mm間隔でビスを施工できますか?
私はできません。
きっと170mmのところもあれば、140mmのところも出てしまうと思います。
しかし、170mmでは不合格なんです。(ビス間隔が狭い場合は問題ありません)
たった20mm違うだけでもダメなのか?と思うかもしれませんが、あなたの住宅を火災から守るためには、たかがビス一本と言えども正確に施工しなければダメなんです。
しかし、予めその定められた正確な位置が印字されている石膏ボードであれば、その印を狙ってビスを留め付けていけば自然と150mmピッチの施工が出来ますよね?
それを可能にするのが「タイガーピッチボード」なのです。
大工さんは、石膏ボードの印しめがけてビスを留め付けるだけ。
現場監督もメジャーで測らなくても、印ごとにビスがあるかどうか見るだけで、規定通りのビス間隔が守られているか一発で確認できます。
しかし、それでは墨出しするだけの仕事でも作業が大変になってしまいます。
ビス間隔を現場でチェックしてみよう
あなたが、もし省令準耐火仕様で建築しているのなら、石膏ボードを留め付けているビスピッチを確認してみてください。
なにも印字されていない普通の石膏ボードで施工している場合は、きっとビス間隔が広い場合があるはずです。
ぱっと見では問題なさそうに見えても、測ってみると案外ダメな場合が多いです。
また今回の物件とおなじようにピッチボードで施工されているのなら、規則正しく施工されているかは、印をみれば一発でわかりますね。
石膏ボードの下地の造り方によってビスを打つ位置は異なりますが、少なくとも規則正しく施工されていないビス間隔では、省令準耐火仕様がしっかり守られているかどうか怪しいものです。
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