新築住宅の設計施工に携わって25年以上の建築士のmakotoです。
この記事を書く前に、今まで何軒のお客様のご新築に携わったか数えていましたが多すぎて嫌になってきたので数えるのはやめました・・・(おそらく200〜300軒以上かと・・)
その新築住宅のお打ち合わせ時に当然ですが住宅の間取りや仕様、さらには色まで打ち合わせさせていただく訳ですが、「これは選ばんでしょ?」「こっちのほうがいいでしょ?」と思うことは数しれず・・・zzzzz
お客様には申し訳ございませんがこっちも商売です。本当は違っていても「いや〜いいですよ!ソレ!!!」って言わなければならないこともあるわけです。
そんなこんなでお引渡し数カ月後にそのお客様を訪問してみると、「コレ選んだけど使わんね」や「多少高いほうがいいと思ってこっちを選んだけど、安いあっちのタイプで良かったんでね?」と案の定ですが言われます。
私の携わらせていただくご新築住宅のお客様が、このブログを御覧いただいているかどうかはわかりませんが、私の経験上でオススメしないモノを書いてみます。
新築時にオススメしないモノ 「間取り・形編」
間取りの類で、私が新築するなら選ばないものはコチラです。
広いベランダ
ベランダって憧れるんですよ。なんでかね。
でもね、ぶっちゃけ「出ない」。
広いベランダに憧れているんです!
そうですよね!ベランダが広いと様々な用途に使えますから、ベランダが広いプランニングとしておきましょう!
なんてやり取りをしている自分がいるわけですが・・・
ぶっちゃけ「本当に使います?その広いベランダを何に使います?」って思うわけですよ。
これだけ高断熱化された住宅でわざわざクソ暑いベランダになんか出ませんよ。冬も同じ。温かいお部屋の中でみかん食べてたほうがどれほど幸せか。
まぁ、洗濯物を干す、布団を干す、などの用途がベランダにはあるでしょうから、出るときはその時だけです。
つまり、
目的の用途をこなせる広さのベランダがあれば十分ということです。決して広大なベランダは必要ありません。
掃除が面倒くさいだけです。
陸屋根
陸屋根っていうのは建物の外観上で四角く見える屋根のことです。
一見、真四角に見えても屋根というのは必ず勾配(斜めに傾斜しているってことね)があります。四角く見せている形の中でゆる〜く勾配がついた屋根があるんですよ。
これをなぜ選ばないか?
それはメンテナンスが必要化どうかが外観上目視できないからです
屋根ってぶっちゃけ見ない。新築時には一生懸命屋根材の色を選びますけど引っ越したあとは遠目でしか屋根の色なんて見ない。
え?お友達や近所の方のお家の屋根は素敵な瓦だったな!って記憶があるから、屋根も見るのではないの?
それは他人の家だから。
自分の家以外であれば自然と遠目に見るシチュエーションがあるからなんとなく屋根も視界に入って記憶があるんです。
でもね、自分の家に車でバーッって帰ってくるときにマジマジ自分の家の屋根なんて見ませんよ。玄関一目散でしょ?
そんな屋根を遠目からでも見える状態であれば、ご近所の方やご友人が来たときに「なんか屋根の瓦がずれてるよ?」とかって見てもらえるんです。(悪質業者がささいな事で訪問してくることもありますが)
まぁ、いずれにしろ「誰か」が屋根を見てくれているんです。
でも陸屋根では誰も見えない。屋根なんて見えない。ましてや自分でも見えない。
思いがけず屋根の上で鳥が死んでるかもしれない、何かが飛来してきて思いっきりぶつかっているかもしれない、言い出したらキリがありません。(実際にメンテナンスに行ってる私の体験です)
陸屋根でも定期的にメンテナンス業者に点検を依頼するならOKです。
でもお金かかるから依頼しないよね?
タタミコーナー
はじめに言っておきます。
リビングなどに付随してデザイン目的に造る「タタミコーナー」はOKです。
でも取ってつけたような3畳くらいの畳コーナーは絶対にNGということです。
だって中途半端なんだもの。
あなたは3畳の広さで何します?私は「寝る」しか思い浮かびません。畳である必要がありませんよね。寝たきゃマット敷けばいいんです。畳がいいのなら置き畳を敷けばいいんです。
こたつを置くって言ったって狭くておけませんよ。
子供を寝かしつけるのに便利だと思うんです!って言う方いましたけど、あなたの子供はいつまで子供なんですか?
タタミコーナーに子供を寝かしつけるのは、もってあと2年じゃないの?
ただ単に広いだけの収納部屋
よく「収納スペースは多いほうがいい」とか言うのを聞いたことありませんか?
確かに「無い」よりかは「ある」方がいいに決まっていますが、「何も考えられていないスペースがあるだけの収納はいらない」ということです。
どこに何を収納するか決まっていなければ、どんどん物を積み重ねて置くはずです。
誰だってそうだと思うんです。
でも、たくさんの服でも機能的に収納できるクローゼットであれば目的の服もすぐに探すことができる。しかし、ごちゃごちゃしまわれた服なんて多分もう着ません。
無駄な買い物です。
「あとから棚をつけよう」では絶対に取り付けません。広い収納部屋を作っても「しまうものが分からないから始めはなにも棚を付けない」は間違いです。
それならば機能的に作られたクローゼットのほうがよっぽどいい。
建築士主体の間取り、形
これは何を言いたいかって言うと、「The建築士」みたいな家ってあるじゃないですか。
あのいかにも「デザイン住宅」って見える、あれのことです。
私も建築士ですが、どう考えたってデザイン目的でしか考えらえられていない間取りや形が、住む人が本当に快適に生活できているんだろうか?って思うのです。
建築士先生に酔っているだけじゃないんですか?ってね。
同業者の我々が見ると、このデザインを造るために無駄なコストがかかっているところとか、そのデザイン要素をなくせばもっと住みやすい家になるのに・・・って思うお家をいくらでも見てきました。
どうしたって建築士というのは前衛的な誰にも負けない「作品」を造りたがります。それがウケれば自分もウケるわけですからね。
でもね・・・、年取ってその建築士先生が考えたカッコいい階段でこけなきゃいいですけどね。
一般の方が考えもしないようなモノを考え、住む人の生活までをもデザインするのが建築士の仕事じゃないいのかな?
住む人の生活を考えない、デザイン重視の家なんて誰でも考えられる。
新築時にオススメしないモノ 「設備・仕様編」
設備・仕様で私が選ばないモノはコチラです。
ブラケット照明
ブラケット照明とは壁についている照明器具のことです。
お部屋や建物のおしゃれさを演出するにはうってつけのアイテムですね。
でもね、ホコリがたまるんですよ、照明器具の上の部分にね。
掃除好きならいいでしょうけど、階段の途中にあるような器具なんて、まぁ掃除しないでしょ?
あと寝室にあるブラケット照明も曲者です。布団や毛布をバサーッてやるたびに舞うホコリが知らぬ間に照明器具の上にホコリを溜め込むのです。
外なんて最悪です。鳥が何を運んでくれるのか「なんじゃこりゃ?」なんて物まであったりします。もちろん、鳥のうん◯もね。
おしゃれさで選ぶなら間接照明かダウンライトですね。実用性重視ならシーリングライトで間違いありません。
キャクター式の引き戸
引き戸が動く仕組みには大きく分けて3つあります。
戸の下にキャスターがあるタイプ
- 戸の下にキャスターがあるタイプ
- 上吊りタイプ
- 敷居すべり上を動くタイプ
この中で曲者なのは「キャスタータイプ」。特にホコリが出やすく換気設備があるようなトイレや洗面所などでは厳禁です。
なぜならキャスターの車部分にホコリがたまりすぐに動きが悪くなるからです。どんなにきれいに掃除していても24時間換気で排気をしているトイレや洗面所には、他の部屋からたくさんのホコリを呼んくるんですよね。
引き戸を採用するなら間違いなく上吊りタイプです。
プリント素材のフローリング
フローリングの種類は無数にあります。その膨大にあるフローリングからあなたは何を基準に選択しますか?
色・質感・メンテナンス性・価格、などが検討項目でしょう。
最近はノンワックスフローリングなどもありますから、どうしてもそういった手間のかからないフローリングを選びがちです。
私は無垢材のフローリングをオススメしますが、この無垢フローリングにはそういったメンテナンス性が高い商品はありません。
また、無垢材のフローリングではどうしても材どうしの鋤きや反りなどが発生しやすい。
これらを嫌って誰しもが安定した材料、そして自然にはない色合いのプリント素材(精巧に印刷された柄を表面に張ってあるもの)を選んでしまいます。
まぁ、きれいですよ。新築時の色合いが長い期間でも軽い水拭き程度で保たれるんですからね。
逆に無垢のフローリングはワックスを掛けなければ表面の質感が落ちてきますし、色合いも年月が経てば変化していきます。
しかし、傷が付きいい感じに経年劣化したモノに「愛着」というものが生まれると思うんです。せっせと掃除してワックスをかけて飴色に変化した無垢フローリングのほうが愛着わきませんか?ちっとくらい傷がついたってそれも「味」です。
でもプリント素材のフローリングではちょっとでも変色したり傷が付こうものなら気になって仕方ないでしょう?
また素足で歩いたときの足の裏で感じる質感の差は、絶対に誰でもわかるはずです。
高気密高断熱住宅
これは賛否両論があり、今の時代は国も住宅の高断熱化を勧めていますから時代に逆行するものでしょう。
確かに高気密高断熱住宅は快適です。
一般仕様で建てた家と比べると、雲泥の差があるのは明らかですし、その瞬間は「あ〜こんな家で生活したいな」って思うのも事実です。
でもね、昔ながらの日本の家がとても過ごしやすく健康的に思うのは私だけじゃないはずです。
たとえ高断熱化していなくても夏は涼しい家はありましたよね。事実、私の実家は今でもそうです。エアコンなんていらない。窓を全開にする必要はありますが、そうすれば自然の風がす〜っと入ってきて扇風機があれば十分に生活できる。
確かに昔に比べ地球温暖化の影響で気温が上がり猛暑がある現代ですし、家が密集して自然の風も通りづらくなってしまっているのも事実です。
このような状況では高断熱化は必須であるのはわかりますが、断熱性能を高めるためには高気密化が必要です。そうなると換気システムも24時間回し続け、窓も開けない生活になってきます。
どうでしょうね?窓も開けない生活が果たして本当にいいんでしょうか?
少なくとも私はそのような立地は選びません。高気密高断熱化しなくても自然の風で涼しくできる工夫は、昔からの日本建築には十分にあるのですから。
都市部で住宅を建てるなら高断熱化は必要でしょうけどね
人工大理石のシンク
キッチンのシンクといえば昔はステンレスのみでした。
これがホワイト色の人造大理石シンクが登場すると誰もが真っ白いシンクを選びました。
今でも人気のアイテムのひとつですが、私は選びません。
なぜなら「その綺麗さは10年後にはなくなるから」。
そりゃキレイですよ、真っ白いシンクであれば食材もとても美味しそうに見えますし、なにより清潔感がありますよね。
お客様からも「これって汚れますか?」って聞かれますが、絶対に汚れてきますと答えます。どんなにきれい好きな奥様のシンクでも10年後にはあらら・・って感じになります。
でも、華やかさはないけどステンレスシンクではそれがない(多少傷は付きますが)
長く使うものだからこそ、私は将来も考えて素材を選ぶことをオススメします。
コーキングを使用する外壁材
住宅に採油される外壁材で一番多いのはサイディングです。
サイディングとはセメント素材のものを板状に固め、表面に多彩な柄を表現して塗装された板状の外壁材のことです。
一般的なサイディングでは板と板の間に「目地」が必ずあります。この目地部分をコーキング材(ゴムのような柔らかい素材)を充填して納めるのですが、これが厄介です。
一般的なコーキング材は紫外線による影響で10年も経たずに劣化してきます。(立地条件等により時期は異なります)柔らかかったコーキング材も年々固くなり、ヒビが入りだしてしまいには切れます。
当然ですが、劣化したコーキング目地がそのままでは外壁に悪影響を及ぼしますからメンテナンスが必要になります。いくら高耐候性コーキング材でも20年経つとあやしくなってくる。
あと、コーキング目地があることによって外壁のデザインが途切れるのも悲しい。
私なら、外壁材はコーキング目地の必要のない材料を採用しますね。
- 塗り壁
- サイディングでも大壁工法で最後に吹付け塗装などを施工するもの
- 四方相じゃくりサイディング(サッシ周りにはコーキング必要)
- タイル張り
- 金属サイディング(サッシ周りにはコーキング必要)
まとめ
まだまだたくさんの採用しない採用したくない、オススメしないモノがありますが、それはまたの機会に記事にします。
現在では数えられないくらいのメーカーからそれこそ覚えられないくらいの無数な商品が出ています。また間取りも昔とは異なる多様性を求めるモノが採用されるようになってきました。
そこにはなんとなく「人とは違うモノ」を求める欲求があるのでは無いでしょうか?
いつの時代でもロングセラー商品というものは存在します。多くの人に愛され、多くの人に不満が出ないからこそロングセラーだと思うんです。
今回の記事の私の考えに共感しない方でも、ロングセラーなモノ、定番なモノ、を採用することをオススメします。
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