2021年4月1日以降に設計契約を結ぶ住宅には、建築士による省エネ性能の説明が義務化されます。
「なんのこっちゃ?」
って、一般の方は思うでしょう。
住宅の省エネ性能の説明義務化とは、地球の温暖化防止に向けCO2削減等へつながる国の政策です。
「そんなの俺には関係ないっす!」
と言う方の気持ちもわからなくはありませんが、そうも言ってられないくらい政府は焦っているのです。
だって日本の国全体で早急に省エネ性能を向上しなければ、海外から(先進国)見て明らかに遅れをとっているのですから無理もありません。
隙間風なんて当たり前の昭和の住宅とは言いませんが、現代の日本の住宅も決して高くもない省エネ基準でさえ義務化されていない実態を、日本国民全員が認識を持たなければなりません。
このような状態を打破するための意味でも、住宅の省エネ性能の説明義務化が始まるわけです。
しかし! 2021年4月以降に家造りをはじめる方にアドバイスしておきます。
「あなたの家は省エネ性能基準を満たしています」という説明だけで安心しないでください。
なぜなら、
省エネ性能説明義務化の基準は低レベルすぎる数値で適合か不適合かを判断している
からです。
きちっと、あなたの家の省エネ性能の数値の意味をしっかり理解し、自分が求める基準に達しているか判断しなければ、後々後悔することになるかもしれませんよ。
とりあえず、お偉いさん方の会議を見るべし!
お前、なに偉そうに言ってんだよ!って思う方、省エネなんてどうだっていいんだよ!って思う方、とにかく2021年4月以降に家づくりをはじめる方は、まずは下記の動画を見てみてください。
第5回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース
※上記のボタンを押すとYou Tubeに飛びます。2時間上の動画です。時間があるときに御覧ください。
お役人さんらしい、長ったらしい題名から想像できるとおり、お偉い先生方やお役人さんと大臣が「住宅におけるエネルギー性能向上に向けた規制制度のあり方」を議論している会議の動画です。
冒頭部分は飛ばしても構いませんが、この会議の本題を議論している21分過ぎあたりからが重要です。
非常に興味深いことを議論していますが、2時間以上の長い会議であるため、全部を見るのが面倒くさい方(これから家造りを検討している方)の為に順を追って要約してみました。
海外からみた日本の住宅の省エネ性能
21分50秒くらいから、総合建材メーカーのグローバル企業「サンゴバングループ」の会社の方の話が始まります。
日本人にとって「サンゴバングループ」って聞いても知っている方はほとんどいないかもしれません。しかし「マグ」と聞けば少しは聞いたことがある人がでるかもしれない。
「マグ」とはサンゴバングループの断熱材部門の会社名です。日本でも「マグ」の断熱材はとてもポピュラーなものです。高性能な断熱材はマグ・イゾベールというものがありますね。
この会議中に、その会社の方が日本の住宅の省エネ性能についてどう言っているのか?をまとめてみました。
- 建築物は世界のエネルギー消費量の33%を占める
- 建築物は世界の温室効果ガスに占める割合が39%を占める
- 建築物は今後も増え続け、2050年には今の倍になる
- EUでは、2021年1月よりすべての建築物はnZEBに入ろうとしている
- 日本はたいして高くもない省エネ基準さえも義務化されていない
- 欧州ではトリプルガラス採用率が45.5%あるのに対し、日本のトリプルガラス採用率は2.6%しかない
- 複層ガラスのスペーサーが、海外では断熱スペーサーが多くなっているが、日本ではほとんどがアルミスペーサーでしかない
- 窓の熱貫流率が欧州では2.0以下であるのに対し、日本では2.0以上がほとんど
- イタリアの比較的温暖な地域であるシチリアと、日本の北海道の省エネ基準がほぼ同じ
- EUでは、既存の建物でも最低限のエネルギー性能が必須
- フランスではすべての建築物に対してエネルギー性能表示が必須
- 日本は断熱性能の高い製品の普及率が低い
ZEBとは?
Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼びます。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のことです。環境省 ホームページより引用
日本の住宅に対する省エネ政策は緩すぎる!
次は、37分25秒くらいから東京大学の前昌之准教授が「健康快適な暮らしを限りなく少ないエネルギーコストで全ての人に届ける為に必要な住宅政策について」話をしています
現在の日本の省エネ性能について厳しく言っているのですが、これも話されている内容を要約してみました。
- パリ協定達成に向けたCO2排出量削減の2030年目標の「家庭部門 CO2の39%削減」は相当困難な状況である
- 「断熱による暖冷房の負荷軽減×高効率設備による省エネ×太陽光発電による創エネ」これらによる住宅全体の性能向上が必要不可欠である
- 健康快適は日本の全ての家で必ず実現すべき基本性能
- 真の省エネとは健康快適な暮らしを少ない電気代で実現すること
- 現在の省エネ性能の規制は、非常にレベルが低い
- 省エネ性能適応義務化の期限がない
- 高断熱化は賢い投資
- 民間丸投げ、施主の自己責任、キリの供給者保護、これでは住宅の省エネ性能向上は絶対に進まない
- ZEHは経産省、環境省、国交省の3省合同の取り組みであるが、真面目にZEHに取り組んでいるのか?
- 家を買うときに省エネまで頭がまわらないのは当然である
- 新しい家づくりを驚くほど勉強しないキリの造り手を国交省は守ろうとしているのでは?
- 国民と地球に冷たい無責任な建築行政
- 地域密着でがんばっている勉強熱心な「ピンの作り手」が家造りを担うべき!
- 年間ではネット・ゼロでも冬は電気が足りない
意味は年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅のことを言います。
もっと優しく言うと、冬に太陽光が発電する量が少なくても、夏に発電する量が多ければ、年間で考えればゼロになりますよ〜という住宅をZEH(ゼッチ)住宅と呼びます。
しかし、日射量の少ない冬では太陽光で発電する量は減りますが、気温が低いために暖房で消費する電気も多くなります。よって冬だけで考えればZEH住宅でも電気が足りないということなんですね。
まだまだ話は続きます。
- オールシーズンでのゼロエネ化には冬の無暖房化がもっとも有効
- 断熱と日射取得による無暖房化は実現可能!すでに実現しているスーパー工務店がある。
- 断熱・気密は健康快適な室内環境を少ないエネルギーで実現する為に絶対必要不可欠
- 日本の断熱は世界的にも、ひどく遅れている
- 住宅の省エネ計画はとっくの昔にできていたにも関わらず、国が省エネ性能の義務化に踏み切らなかった
つまり、早期に日本全体で省エネ性能を義務化すれば、自然と省エネ住宅づくりのコストはさがり、やがて日本全体で健康快適な省エネの家造りが実現できるということなんですね。
国土交通省のやっていることは生ぬるい!
- これまでパリ協定における温室効果ガス削減目標の達成するための取り組みを進めてきた
- 省エネ基準適合率や事業者の省エネ関連事業への習熟状況の引き上げなどの環境整備が必要不可欠
- 市場を混乱させない形で進める必要がある
最後に、大臣が国土交通省のことをズバッと切り捨てます
このあと、会議の参加者からの質疑応答があるのですが、国土交通省の方がしどろもどろになって回答しているところもあります。
興味がある方は動画をじっくりみてみてください。
きっと「何言ってるんだ?国は?」って思う方も多数いるかと思います。
国民が知識ないことをいいことに、国が積極的に省エネに取り組まなかったから、今のこの状況にあると思います。国が積極的に主導してやっていれば、今頃はとっくにZEH住宅が当たり前の国になっていたでしょうね。
それどころか、ZEHを通り過ぎてさらに高性能な省エネ住宅が進んで、世界に誇れる省エネ大国になっていたかもしれません。国民全員が安いコストで高性能な省エネ住宅に住んで、健康快適な暮らしを送っていたかもしれません。
よって、今更はじまる、国土交通省の生ぬるい基準で決められた省エネ性能の説明義務化なんてのは、適合しただけではなんの意味もなさないということをもっと説明するべきです。
こんなことを思っている人の意見を、最後に河野行政改革担当大臣がスバっと切り捨てます。
- 世の中、根本的に前提が変わったということを国土交通省は認識していないのではないのか?
- 世の中、ゲームチェンジしたということに気づいていないのではないか?
- 国交省ができないのなら、環境省にやってもらう!
- 良質な住宅ストックを次の世代に残そうといっているときに、いい加減な家を建てるのを認める国交省に住宅政策を任せていいのか?
- なんちゃってトップランナーなんて建材は、しっかりルールを決めてやる
このように、2021年4月1日から始まる住宅の省エネ性能説明義務化については、生ぬるい基準で判断され、ろくに省エネ性能について知識もない工務店が説明しているようでは、本当の意味での住宅購入者の為の政策にはなっていない、とうことを理解して、家造りを考える必要があるということなのです。
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