私が住宅建築の業界に入ったのは約30年前。時の経過というのは早いものです。
こう書くと私の年齢がわかってしまいますが、そんなことよりも、私が若手だったころには当たり前に施工していたものが、現代住宅ではまったくと言っていいほど登場しなくなったモノがあることに気が付きました。
生活スタイルの変化、効率のいい部材の登場、などなどその理由は様々ですが、今回の記事では「昔は当たり前にあったけど、令和時代の住宅では登場しない住宅設備(間取り)10選」を書いてみます。
ありとあらゆるモノが値上げしている2023年。高額商品である住宅の購入を検討している方にも参考にしていただきたい。
何も考えず、しれっと図面に書いてあるから取り付けた、なんて事があるかもしれませんからね。
でも、採用率が低いモノであっても、現代人のあなたにとっては必要なモノなのかもしれません。この記事が住宅購入の際のタシにしてもらえれば幸いです。
昔は当たり前だったけど、令和時代の住宅では登場しないモノ(間取り)
では、さっそくですが、現代住宅では登場しなくなったモノをご紹介しましょう。
今回あげるモノの中には、普通に採用されているモノも実はあります。
しかし、よくよく考えてみてください。
それって本当に必要でしょうか?代用できる違うモノがありませんかね?
床下収納庫
当たり前のようにキッチンの床面に付いていた「床下収納庫」。
当時の私のお客様への説明では、
何か貯蔵するものってありますよね?醤油とか梅干しとか、あるいはお酒とかいろいろあるじゃないですか?!
こういうモノの収納にとても便利ですよ!
確か、こんな風に説明していました・・・。
でもね、、、、
今時、そんなもの貯蔵しないし、ましてや梅干しなんて食べない。食べたくなったら小パックで買ってくるし!
でもって、体を屈めていちいち床にある蓋を開けてモノを取る、なんて動作はめんどくさすぎ!
ましてやですよ、この高気密高断熱で基礎断熱をするのがGOOD!なんて言ってる現代の床下空間は、風通しなんてものは問題外!(一般的な床断熱の家は除く)
真夏の密閉された床下に保存されて熟成された食品なんて、もうそんなもの口にいれたくありません。
よって、床下収納庫は使わなくなって当たり前です。
床下”収納庫”は無くなっても問題ありませんが、床下”点検口”は必要です。
よって、床下の箱は必要ありませんが、床下へ入るための蓋はどこかに必ずあります。
これは必ずしもキッチンになくてもいいですから、容易に点検口として使える他の場所に設置するのがベストですね。
吊り戸収納
吊り戸収納の中に入れたもの取りたいから、脚立か椅子を持ってきて!
なんてやり取りが、昔の家庭ではあったような?
もれなくキッチンの上に設置され、収納力を謳い文句に採用されていた「吊り戸収納」も、キッチン本体のスライド引き出しの登場に合わせて採用されなくなった設備です。
だって、モノを取るのにいちいち脚立なんて持ってこれるか!って話ですし、ムーブダウン吊り戸なんてモノまで有りましたが、これはせっかくの収納力を減少させる無駄な装備の代表格!
よっぽどキッチンのスライド引き出しの中にしまったほうが効率がいいに決まってます。
現代の素敵なシステムキッチンでも吊り戸棚はカタログに記載されています。
なにかしらの理由でほしい方は遠慮なくご注文ください。
でもね、使いますか?そんなに高いところにある収納棚を?
下駄箱
靴が散らかった玄関はみっともない!
靴を脱いだら、ちゃんと揃えなさい!
普段履かない靴は下駄箱にしまいなさい!
って、よく怒られたものです。
でも、その玄関にお父さんのゴルフバックがあったり、ハンガーに一応吊り下げられているけど、脱いだままのコートが当然のように掛けてあったり・・・。
なんかおかしくね?って思ってた若かりし頃の私ですが、玄関に悩むそんな家庭には玄関クロークが現代のマストアイテムです。
まぁ、どう考えても下駄箱よりも玄関クロークのほうが収納力で勝りますし、玄関クロークを抜けて廊下へいける2WAY動線にしておけば、靴が散らかった玄関なんてものにもおさらばです。
子供の教育上で意味があるとか、そういうこと言われるかもしれませんが、この情報にあふれる現代ではそんなことよりも他のことで教育することが大切です。
掘りごたつ
これは、好きな人には好んで選ばれるものですので、すっごくたまに設置要望があるものですが、位置を容易に変更できない「掘りごたつ」もほとんど絶滅した住宅設備ですね。
おしゃれなソファをこう置いて、その向こうには大きいテレビを置き、周りにアクセントのエコカラットなんて張るといいよね!っていう打ち合わせでは、そもそも登場するはずがありません。
これはね、たまに居酒屋とかで座るから新鮮味があっていいモノであり、掘りごたつは家に設置するものではありません。
申し訳ございません。
言い過ぎました・・・。
一定のファンがいる掘りごたつです。パナソニックなどのメーカーではしっかり商品があります。必要な方はどうぞご採用ください。
Panasonic 堀座卓(掘りこたつ)はコチラ。
彩風勝手口ドア(引き戸)
絶滅はしていません、勝手口はね。
ついている家には付いている。
でもね、そのドアについている彩風機構(上げ下げする窓)をどれだけ動かすか?
きっと動かさない。
引用 LIXILホームページより
キッチンに風を入れるための窓と外に出るためのドアが一体になれば、どれほど便利なことか!って思いますが、高気密高断熱な住宅では、この彩風機構なんて使うわけありません。
ましてや、金額が高い!とくれば採用率が減って当たり前です。
勝手口が欲しい場合は、テラスドアなどの一枚ガラスタイプが主流ですね。
こっちのほうが金額も安いですし、お掃除だってやりやすい。
そもそも油っこいものが発生するキッチンに、彩風機構部に網戸があること自体が間違ってますよね?
外してじゃぶじゃぶ洗ってください、とでも言うのでしょうか?
ブラインドインペアガラス
今の若い方にはこんな商品があるなんて思いもよらないかもしれません。
だって、ガラスとガラスの間にブラインドが入っているんですから。
現物を見たら、きっとビビりますよ。
引用 LIXILホームページより
いまや”トリプルガラス”なんてものが一般的になりつつある現代の高性能窓ガラス。
また、ブラインドでなくても、窓の外に取り付ける可動ルーバー面格子のように容易に目隠しできるものまである。
メンテナンスをどうすればいいのか悩むブラインドインガラスなんて選ぶ理由が見当たりません。
確かに、お掃除が楽になるとか、遮熱効果があるとか、容易に目隠しできるとかのメリットは認めます。
しかし、金額が高い、壊れたらどうする?、保証期間が一般ペアガラスよりも短い!、というデメリットのほうがはるかに大きい。
ブラインドインペアガラスは現代のサッシでも問題なく注文できますよ。(サッシ種類によっては選べません)
気に入ったら、デメリットを承知の上でどうぞご採用くださいませ。
浴室の窓
上の見出しで書いた「ブラインドインガラス」って、浴室で採用される割合が多い装備です。
室内側に取り付けたブラインドではお掃除が大変!って言う理由で昔は採用されていましたが、現代住宅ではそもそも「窓」がない(必要のない)物件をチラホラ見ます。
よくよく考えてみると、浴室の窓なんて開けない?
そうです!
例え、あったとしても外からの視線を気にして小さくした窓では換気できるはずもありません。
24時間換気で換気扇フル稼働してたほうがよっぽど換気される。
風呂に入りながら外なんて見るわけもないし、だったらそもそも「窓」なんていらないじゃん!ってなるのは自然な流れです。
電話配線用配管
これだけ携帯電話が普及した時代で、ましてやスマホなんて当たり前、電話はLINE電話しかしない、なんていう時代に固定電話なんてどう考えても必要ありません。当然ですがFAXもです。
昔は必ずあった電話配線用配管(口)。
この配管の中にNTTの方が電話用配線を通して電話が開通するわけですが、ネット時代の現代では電話線に変わって光ケーブルが壁の中を通っています。
住宅会社さんから提出された図面の中に「電話配線用配管」なんてものがあったら要確認ですよ。本当に自分にとって必要かってね。
まだまだ5Gは普及途上ですが、そもそも光ケーブル自体も10年後くらいには必要なくなっているのかもしれませんね。
有線LANも、Wi-Fi6対応の無線ルーターを使えば、ゲーマーとかネット回線を使用する仕事でない限り、ほとんど必要のない装備です。
ちなみにメッシュWi-Fiを家の中で構築すると、家の中どこでも快適にネットが繋がります。
洗面脱衣室
これはモノではなくて間取りですが、「洗面脱衣室」も過去の遺物になろうとしていますね。
そもそも、脱衣場と洗面所が一体になっていることが、生活効率を悪化させていることに今頃になって気付き始めた感じ。
たとえ家族であっても「個」の生活スタイルを尊重する現代では、あ風呂上がりのお父さんの横でシャワーを浴びた娘さんがドライヤーを使用するはずがない。
ましてや、脱衣と洗濯と洗面という使用する人が異なるのが当たり前の設備を一坪の中で完結すること自体に無理がありますよ。
さらに洗面脱衣室で室内干しもするとなれば、家の中で交通渋滞が起こるのも当たり前です。
今どきのスタイルは、浴室の横に脱衣場、ドアを開けた先に洗濯場、さらにその向こうに洗面台、そしてファミリークローゼットとなるような効率のいい間取りが好まれて当然です。
「そんなに間取りを分けたら家が大きくなっちゃう」と思う方は、自分の家族の使用状況をよく考えてみてください。
脱衣する場所に1坪も必要ありません。洗面する場所に1坪も必要ありません、廊下の一角に洗面があったってなにも困りません。
こう考えると、結構小さな間取りでも採用できなくはない。
ぜひ、「洗面脱衣室」はやめて、効率のいい間取りを考えてみてください。
対面キッチン
ちょっと前まで当たり前のようにプランニングされていた(していた)「対面キッチン」。
でも、よくよく考えてみると対面って”やりにくく”ありませんか?
なにがって、キッチンとダイニングとのコミュニケーションがです。
料理をテーブルに並べるにもキッチンの前にある腰壁なりカウンターなりを経由してからでないとダイニングテーブルに到達しない。
ワンクッションが必ずある。
では、どうするか?
キッチンの横にダイニングを設置すれば、そのまま横に移動するだけ。片付けも横にあるキッチンにほいっ!てもっていける。
また、対面キッチンではキッチンに向こうにある食器棚や冷蔵庫にぐるっとまわってからでないと行けないですが、キッチンの横にダイニングがあれば、その距離は間違いなく短くなる。
きっと、キッチンに一番近いところにママが座るでしょうけど。
個室化していた昭和のキッチンからすれば、画期的にオシャレで素敵に見えた対面キッチンも、よくよく考えてみれば効率がよくなかった、ということですね。
年がら年中、対面キッチンをみていた私にとって、対面キッチンに”飽きた”というのもあるかもしれませんが、なんとなくキッチンと横並びのダイニングのほうがオシャレにみえませんか?
また、食事中になにがなんでもテレビを見たい!という方は別にして、
まとめ
今回は、昔は当たり前のようにあって令和時代の住宅では登場しないモノ(間取り)を10選書いてみました。
この記事を書いている最中にも、あっ!あれもないなぁ!と思いついたものが他にもありますが、これらはまた別の機会に記事としてまとめてみようと思います。
冒頭に書いたとおり、あらゆるものが値上げされている現代。
先人たちが住宅に採用したけど、時代の進化とともに、また生活スタイルの変化とともに採用されなくなった住宅設備。
これらは何かしらの理由があって採用されなくなったモノです。
しかし、現代では採用されないモノでも、本当に自分にとって必要なモノを見極めて、例えレアなモノでも必要なモノにはコストをかけるべきだと私は思います。
だって、他人が文句言おうが自分の家ですからね。
大切なのは流行に左右されず、しっかり見極めること。
この記事が、そういったモノを見極めるきっかけになりましたら幸いです。