昔、私が担当させていただいたお客様からこんなお問い合わせのお電話がありました。
家族の生活スタイルも変わって我が家も手狭になってきたので、家を広くすることを検討したいです。いろいろな要望はあるのですが、そもそも私の家は増築できるのでしょうか?
住宅を建築するとなるといろいろな法律を遵守しなければなりません。またその法令を遵守している計画かどうかを各自治体に申請を出さなければなりません。これを建築確認申請と言います。
この申請自体は専門的な知識や書類作成に関わる時間が必要ですので、建築士や住宅会社に依頼するのが一般的です。
でも、専門家に相談する前に、まずは増築可能かどうかの最低限のチェックをすることは可能です。
今回は「増築をしたい!」と思ったときに、まずチェックすべきポイントを解説します。
増築できないパターン
先日、私に問い合わせていただいたお客様もそうですが、自分の家が増築できるかどうかをまず知りたいですよね。
ということで、逆に「増築できないパターン」を説明します。これに当てはまれば残念ですが諦めてもらうしかありません。
建ぺい率・容積率オーバーはNG
自分の土地に対して建築できる建物の大きさには制限があります。
土地に対する建築面積の割合を表す数値が建ぺい率です。
土地に対する延床面積の割合が容積率です。
建築場所によってその割合は異なり、自治体の建築指導課などで確認することができます。この決められた数値以上になる場合は建築することができません。
では、モデル例を見ながら解説してみます。
- 敷地面積 200㎡
- 建築面積 65㎡
- 延床面積 102㎡
- 建ぺい率 40%
- 容積率 60%
あなたの家がこんな条件であった場合に、いったいどれだけの増築が可能なのでしょうか?
まず、建ぺい率が40%ということは
200㎡×40%=80㎡
つまり、その土地は建築面積80㎡の建物まで建築可能ということです。次は容積率を計算してみましょう。
容積率が60%ですので
200㎡×60%=120㎡
延床面積が120㎡の建物まで建築可能ということになります。
ここで自分の家の今現在の面積を見てみましょう。
今住んでいる建物の建築面積は65㎡ですので、80−65=15㎡ 残り15㎡まで建築可能ということになります。また現在の建物の延床面積は102㎡ですので、120−102㎡=18㎡ 延床面積は18㎡まで増築できるということになります。
この計算をしてみると、案外と残りの㎡数が少ない場合があります。計算結果で残り5㎡とかであった場合は、5㎡の部屋なんて実用的ではありませんから実質的に増築は不可ということになりますね。
実際には面積を計算する上でもっと細かいルールがありますが、これ以上となると専門的になってきますから、まずは上記の簡易な計算でチェックしてみてください。
高さ制限を超える建築はNG
先程の建ぺい率や容積率というのは面積を考えました。しかし建築物というものは当然ですが高さがあります。
この高さも制限があります。
- 建築物の高さの制限
- 北側斜線による制限
- 道路斜線による制限
第一種低層住居専用地域などでは建物の絶対的な高さが10メートルと定められています。北側斜線制限のある地域では真北方向の隣地までの水平距離によって高さの制限が求められます。
また道路すれすれに建てて道路に支障がきたさないようにするために道路斜線制限というものもあります。
これらは少し専門的な知識が必要ですから、専門家に聞いたほうが手っ取り早いでしょう。
ものすごく簡単に言えば、ご近所さんに比べて自分だけが高い建物を建築することはできない、ということですね。
古い建物はNGではないけど要注意
建物を建てるときは基本的に現行の法令にあった建物でなければなりません。
しかし、過去には何度かの建築基準法改正がありました。増築しようとしている建物を建てたときはOKだったとしても、現在の法令に当てはめるとNGという場合位は多々あります。
この場合は現行の法令に合うように古い建物も工事しなければなりません。例えば耐震的な計算は以前と比べ厳しくなっていますから、現行法令に当てはめると耐震壁が足りませんということはよくある話です。
こうなると古い方の建物の壁も開口して筋交い補強をするとか、緊結金物で接合部を強固にするとかといった補強をしなければなりません。もしかしたら基礎も補強しなければならないかもしれません。
自分の建物が現行法令にあった強い建物になるのですから悪いことではないのですが、費用の面で思いの外、高くなってしまうことがありますから、古い建物を増築しようとしている方は要注意です。
一般的にコンクリートの強度は30年を過ぎると低下していきます。ましてや検査が現在ほどうるさくなかった30年前の鉄筋コンクリートの基礎の強度は怪しいものです。
いくら柱や梁などが強くても基礎が貧弱であればなんの意味もありません。ゆえに古い建物は基礎から補強することをおすすめしますが、基礎工事というのは費用がかさみます。
費用対効果を考えると・・・どうでしょうか?
以上、増築を考えるときに可能かどうか考えるざっくりとしたポイントを解説しました。
建築確認が不要な増築もある?
実は建築確認申請が必要のない増築工事もあります。
それは、増築しようとしている面積が10㎡以下である場合です。この場合は建築確認申請は必要ありません。
しかし、防火地域や準防火地域である場合は、例え10㎡以下であっても建築確認申請は必要です。
まとめ
増築しようとしているあなたの条件が今回解説した内容をクリアしたとしても、使いにくい増築プランではお金の無駄使いです。
また、例え増築工事であっても耐震的な要素は抜かりなく考えておく必要があります。
そういった必要条件をクリアした上で、増築しようとした本来の目的が果たせる工事を考えるには、やっぱり専門家に相談するのが一番だと思います。
今ではネットから無料で住宅会社などに相談できるサービスもありますから、自分の理想の増築を実現するには積極的にこういったサービスを利用してみるのもおすすめですよ。
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