住宅の基礎は、鉄筋コンクリート造です。この基礎の形状によってベタ基礎なのか布基礎なのかに別れます。
昨今の住宅の基礎は、ほとんどがベタ基礎構造かと思います。
ベタ基礎というのは、いわゆる底の部分にも鉄筋を配置し、そこへ生コンを流し込んでベースをつくり、その上に立ち上がり部分の基礎を造る方法です。この底の部分がないのが布基礎と呼ばれます。
今回はベタ基礎の鉄筋配筋検査時に一般の方でも見ればすぐにチェックできるポイントを解説します。
ベタ基礎構造とは?
ベタ基礎の配筋状況の写真です。
底の部分には、この物件ではD13という太さの鉄筋を200mmピッチで縦横に並べて設置してあります。
立ち上がり部分の一番上と下(主筋)にはD13の鉄筋が、中間(あばら筋)にはD10の鉄筋が施工されています。
鉄筋の種類
D13という言葉ですが、異形鉄筋(鉄筋の棒の周りにボコボコとしたリブ状のものがあるもの)で太さの呼び径が13(正確には12.7mm)という意味です。これとは違うボコボコがないものは丸鋼と呼ばれます。
異形鉄筋の材質はSD295Aとか難しい表記がありますが、これは一般の方には難しいので割愛します。
この異型鉄筋にはなぜボコボコがついているのかというと、コンクリートへの付着力、定着力を高めるためです。住宅の基礎に使用される鉄筋はこの異形鉄筋です。
設計図、基礎伏せ図、基礎断面図などにどこにどんな鉄筋を使いますと書いてあるはずです。
住宅基礎鉄筋の配置基準の根拠
この鉄筋の配置基準は建築基準法では、ものすごくざっくりとしか記載されていません。そして、そのままで施工する会社はほぼないでしょう。
ではどういう基準で住宅会社は決めているのか?
現在の住宅は住宅瑕疵担保責任でなにかしらの保険に入ることが義務付けられています。なんとか保証機構とか、「〇〇」保証とかに加盟する必要があります。この保証会社の基準では様々なことが細かく規定されています。基礎はこう作ってねとか、構造躯体はこういう基準ですよとか。
その基準の中にある、基礎配筋基準をもとにその会社の仕様を決めているのです。
この基準は保証会社によって昔は結構バラバラでしたが、今はどの保証会社でもだいたい同じ仕様です。
底盤(ベース筋)の配置基準
これもちょっと難しいですが、立ち上がりと立ち上がりで囲まれた部分の広さで、使う鉄筋の太さ、配置ピッチが決められています。またさらに重い住宅(瓦屋根等)軽い住宅(金属屋根等)でも異なります。
だいたいですが、普通の住宅(軽い屋根)で3,640×3640mmで囲まれた広さであれば、D13の@200で大丈夫です。
これがもっと広い空間ですと鉄筋の配置ピッチを150mmにしなければならないとかになります。
(※また細かい基準ですが、囲まれた四角が長方形の場合はまた違う考え方が必要です)
ですが、住宅会社はだいたいどの住宅でも大丈夫な配筋基準を標準仕様としていると思います。物件ごとに違う配筋基準ですと間違いの元ですので、安全を見てオーバー気味で標準仕様を決めている会社もあるかと思います。
立ち上がりの配筋基準
立ち上がっている部分の一番上と下に左右に通っている鉄筋が主筋と呼ばれるものです。この鉄筋がコンクリート一緒に固まり、上部からの荷重をささえる仕組みになっています。
この基準は、またまた難しいのですが、その立ち上がり部分の長さによって基準が決められています。
簡単に言えば「このスパン(長さ)であれば太い鉄筋、もしくは鉄筋をダブルにしてね」とかです。
以上大まかに住宅の鉄筋の配筋基準がどう決まっているのか解説しました。
当然、基礎の仕様はもっと細かく規定されています。しかし一般の方はそこまで知らなくても大丈夫です。だって、配筋検査でその保証会社の人が細かくチェックするのですから。
次は、そんな難しい基礎配筋基準でも一般の方もチェックできるポイントをご紹介します。
セルフチェックポイントその① 鉄筋のかぶり厚さ
かぶり厚さとは鉄器の表面とそれの周りにあるコンクリートの表面までの最短距離のことです。この距離は建築基準法施行令で規定されています。
土に接する部分の基礎立ち上がり部 4cm以上、その他基礎部分 6cm以上
下の写真はベタ基礎の底の部分です。つまりここは6cm以上のコンクリート厚さが必要な部分です。このかぶり厚さ不足の状態では、コンクリートの付着不足による耐力の低下、中性化に伴う鉄筋の腐食等の恐れがあります。
ベタ基礎では、このかぶり厚さを確保するため、サイコロのような固まりをスペーサーにして鉄筋を浮かせた状態で鉄筋を組んでいきます。
この写真ではしっかり6cm以上ありますね!
しかし!!!
このサイコロ状のものが使われていても、その下の部分の地面が平らに整形されていないと6cmない場合があります。全体的に均一に確保されているかチェックしましょう。
底の部分だけではありません。立ち上がり部分もかぶり厚さが確保されているか確認しましょう。
これらはなにか測るものがあれば誰でもチェックできます。
セルフチェックポイントその② 重ね継手の長さ
鉄筋というのは長さが12m位のものまであります。一般的な住宅であればこの長さの鉄筋であれば、途中で継がなくてもカバーできるでしょう。
でも、そもそもそんな長いものを工場から現場まで持っていけません。
バカでかいお店とかを造る現場ではまだしも、60坪から100坪程度の敷地の住宅地には持っていけません。で、現場では必ず鉄筋の継ぎ手があるわけです。
鉄筋の継ぎ手には重ね継ぎ手というものと溶接継手があります(機械継ぎ手もありますが)。しかし、住宅基礎では重ね継手が一般的でしょう。この重ね継手とは、それぞれの鉄筋の横に決められた長さの鉄筋を添えて(縛って)継ぐ方法です。
これは隅の部分の継ぎ手写真です。
それぞれの鉄筋に一本鉄筋が添えられているのがわかるでしょうか?この継手部分の長さが重要です。
当然ですが、極端に短い鉄筋を添えてもなんの役にもたちません。細かい話は割愛するとして、重ね継手に使用する鉄筋の長さは、一般的にその鉄筋の太さの40倍の長さが必要とされます。
D13 の鉄筋ですと、継ぎ手長さは13×40=520mmという具合です。
写真を見てもらうと、主筋のD13 の部分には520mm以上の鉄筋が添えられていますので、これで大丈夫です。
しかし!!!
時々、この重ね継手部分が先程述べた「短い鉄筋」で施工されてしまっている現場があります。
ほとんどの住宅現場の鉄筋は、鉄筋工場で加工されたものが使用されているため、こういった問題はないですが、職人さんが現場で(あるいは自分の作業場で)曲げ加工しているような現場では要注意です。以外にちょっと短いときがあります。
セルフチェックポイントその③ 鉄筋のあき寸法
鉄筋のあき寸法とは、隣り合う鉄筋と鉄筋の間の隙間のあきのことです。
この写真の状態ですと、十分にその”あき”は確保されています。
鉄筋あき寸法は下記のように決められています。
・25mm以上
・粗骨材径の1.25倍以上
・鉄筋径の1.5倍以上
なんだか難しいですよね?
要するにあまり鉄筋と鉄筋が近すぎると、その間に十分にコンクリートが入っていかなくなり、十分な強度を期待できないということで、十分な間隔をあけて施工してね、ということです。
コンクリートを構成する材料は、水・セメント・骨材です。骨材のなかには、粗骨材(簡単に言えば砂利のこと)と細骨材(簡単に言えば砂のこと)に別れます。
この粗骨材(砂利)の大きさ以上に鉄筋の間隔が空いてなければ、コンクリートがそこへ流れ込まないのはなんとなく想像できると思います。よってその鉄筋のあきが決められているのです。
しかし!!!
これが意外と守られていない。この寸法はいちいち職人さんは測りながら並べていません。感覚です。よって、ふいに狭い感覚で鉄筋を縛ってしまうことがあるのです。
検査官がチェックもするでしょうが、見落とすこともあるかもしれません。
なんとなく狭そうだな(25mm以下)・・・と思ったら会社の方に聞いてみたほうがいいかもしれません。※ちなみに継ぎ手の鉄筋はこれには該当せず、間隔を開けずに施工します。
まとめ
基礎の鉄筋配筋基準は、各保証会社の基準仕様書に何ページにも渡って書かれているものです。よって一般の方にはかなり難しいです。
しかし、上記のような内容はだれでも見れば確認できます。これらのことが守られていない基礎鉄筋を施工する会社だと、その上に建つ建物もちょっと不安かもしれません。
またこの程度のこともチェックできない現場監督では信頼できないものですだれでも簡単にチェックできることだからこそ、チェックできて当たり前です。プロならなおさらです。
もし、そうだった場合は、ご自身の建築に携わるスタッフを早めに交代してもらってもいいのかもしれません。
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