巨大地震は必ずやってきます。それがいつなのかは誰にもわかりません。
現代の住宅は基本性能も上がり、しっかりとした作り方の家であれば震度6クラスの地震がきても倒壊はしないでしょう。
しかしその時の地震は一回でも、だいたい余震というものがあります。
余震が震度6クラスというものも不思議ではなく、大いに有り得ることです。
これに対応するため制震ダンパーを検討する方も多いのではないでしょうか?
その制震ダンパーの選び方について解説します。
制震ダンパーの種類
そもそも制震ダンパーとは柱、梁の接合部に設置し、建物の地震の被害を軽減する装置のことを言います。
この制震ダンパーは大きく分けて下記のものがあります
・オイルダンパー
・ゴム系ダンパー
・金属鋼材系ダンパー
オイルダンパー
自動車に搭載されているショックアブソーバー。タイヤからの振動を車体に伝えないよう上下に動いています。
すごく簡単に言えば、これのでっかいバージョンがオイルダンパーに当たります。
車もそうですが、内部に入っているオイルの抵抗によって揺れを吸収します。
メーカーによって設置する場所や本数は異なりますが、比較的設置する場所の自由度は高いです。
ゴム系ダンパー
制震ダンパー内に特殊なゴムの弾性の部材で、地震の揺れのちからを熱エネルギーに変換するものです。
スジカイ(壁の中にある斜めの木材)形状のダンパーで、その内部にこのゴムを使用して揺れを軽減するわけです。
おおよそ家一軒(30坪位として)で数本設置します。メーカー、材料によりその設置本数は異なります。
デメリットは非常に重いことです。これはお客様には直接関係ないですが、施工する職人さんは結構大変です。
金属鋼材系ダンパー
字の通り金属のみで成形されたダンパーです。ダンパー部分に特殊な形状の金属を搭載し、それが曲がることによって揺れを吸収します。
比較的仕組みが簡単であるため、価格は安い傾向にあります。
種類によっては、耐力部材(スジカイ)と共用することができるものもあります。
で、どれがいいのか?
一口にどれがいいです!とはいえません。それぞれにメリット・デメリットがあります。
オイルダンパーは比較的に設置本数が多い傾向にあります。ゆえに設置コストが高くなります。
自動車のオイルダンパーと同じで、小さい揺れから大きな揺れまで対応できます。
また内部に入っているオイルが漏れてしまってはなんの効果も期待できません。信頼できるメーカーのものを選びましょう。
ゴム系ダンパーは価格は中間くらいです。このダンパーは効果を発揮するために設計時に建物に合わせて十分な検討をする必要があります。
基本的に壁の中に設置するため、間取り上設置したい場所に壁がない場合は壁をつくる必要が出る場合があります。
金属系ダンパーは、小さい揺れには対応できません。また繰り返しくる揺れにも対応が弱い傾向にあります。
なんとなく考えてもらえればわかるかもしれませんが、例えば針金をくねくね曲げていると自然とボキッと折れますよね?
まぁメーカーがいろいろな試験をして開発しているものですから、そう簡単には折れないでしょうが、繰り返して揺れていれば少なくともその効果は薄れていくはずです。
あと耐力部材(スジカイ)と共用できる部材があると書きましたが、これにも注意が必要です。
耐力壁というのは大きな力に変形しないように踏ん張って家を支えているものです。
しかし、制震ダンパーというのは力を吸収するものです。
共用できる制震ダンパーということは、建築基準法で定められた力が加わるまでは変形してはいけません。
とうことは、その定められた力以上の揺れが来た時に初めて制震ダンパーとして機能するわけです。
想定外の大きな揺れには有効でしょうが、想定内の小さい揺れには意味がないということです。
私は大学の教授でも、メーカー開発責任者でもありません。
ですが、多数の商品を現場で現物をみて設置してきました。幸い私が携わった制震ダンパーを設置してある家が、大きな地震に襲われた後の状況を直接見たことはありません。
そんな私ですが、最終的に選ぶとすればオイルダンパー系のものでしょうか。
オイル漏れが常に気になりますが、これはどのダンパーでも同じことかと思います。
だって壁の中にどれも設置されているのですから、他のダンパーでも壁の中でどうなっているかなんて一般的にはわかりません。
信頼できるオイルダンパーメーカーを選べばいいのです。しっかりしたものであればその効果は確実に期待できます。
どうしたって地震は繰り返しやってきます。
その繰り返しに対応でき、小さい揺れにもある程度対応できるのはオイルダンパーだと思います。
我々建築士ができること
ここ30年内でも大きな地震は各地で起きました。その度に大勢の尊い命が奪われました。
私は阪神淡路大震災のときはその直下にはいませんでしたが、近県に住んでいた為、ただ事ではない揺れにびっくりした記憶があります。
東日本大震災のときも、その直下にはいませんでしたが、足場の上にいて大きな揺れに動揺したのをまだ覚えています。
ニュースで見て、多くの建物が倒壊した状況をみると胸が痛みます。
なんで倒壊を防げなかったのだろうかと。
デザイン優先にして耐震性はおろそかにしていなかっただろうか?コストを考えるあまりに基本性能を犠牲にしていなかったのか?
家は人々の貴重な財産であり、どんなことがあってもその命を守る必要があると私は思います。
建築士はその建物を設計し建築する職業です。
さまざまな要望があるのは当然です。ですが、この基本性能である耐震性を犠牲にしてはいけません。
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