新居が出来上がるのを楽しみにしているお客様から、
おい!俺の家の基礎鉄筋が錆びてるぞ!そんなもん使いやがって!ふざけるな!
と、言われることがたまにあります。その時の私は、下記のようなお返事をさせていただきます。
ご指摘ありがとうございます。また、お客様自ら現場をチェックしていただき大変ありがたく思います。お客様のご心配はごもっともでございます。しかし、建築士である私からこの件に付きましてご説明させていただきます。
今回の記事では、その疑問「基礎鉄筋のサビは大丈夫か?」にお答えします。
鉄は錆びる
基礎の鉄筋の素材を簡単に言えば「鉄」です。鉄は水に触れなくても空気中にさらされているだけでも錆が発生します。またサビるとは酸化することです。鉄の特性上、何かしなければこのサビを防ぐことはできません。
あなたの身の回りにある、何もしていない「鉄」も錆びているでしょう?
住宅の基礎鉄筋の錆(サビ)は?
鉄筋は錆の進行をおさえるために、鉄筋工場では鉄筋に鉱油が塗布された状態で出荷されます。これを鉄筋加工場で曲げたりして、住宅の基礎仕様書に基づいた形状の鉄筋を作ります。まず、この曲げる作業の段階で鉄筋表面の皮がめくれます。次に輸送時の衝撃やこすれにより表面に小さなめくれができます。
この鉄筋の表面がめくれた部分から錆が発生します。この写真を御覧ください。
鉄筋を曲げた部分に集中してサビがありますよね?こういう状態になるんです。しかも、この状態になるまでの期間はすぐです。雨に濡れていなくても、空気中にさらされている数日間に放置しているだけですぐにこうなります。またこの状態で放置すると、錆はどんどん進行します。
しかし、写真の鉄筋のような状況である錆は、表面上の錆(サビ)です。
鉄筋のサビは大丈夫なの?
はじめに書いたとおり、「錆びる」とは酸化することです。これに対しコンクリートは強アルカリ性です。この鉄筋がアルカリ性のコンクリート内に埋まることにより、それ以上酸化が進むことを防いでくれます。つまり、あなたが現場で見た表面上の錆は、鉄筋がコンクリートの中に埋まることにより、それ以上錆が進行することはありません。
サビが芯まで進行する期間は?
住宅の基礎鉄筋に使われる鉄筋の太さは、D13~D16程度でしょうか? この鉄筋の太さで、芯までサビが進行する期間は30年前後と言われています。あくまでコンクリートに埋まっていない鉄筋が錆びる期間ですので、鉄筋がしっかりコンクリートに埋まっているのであれば、この期間以上であるのは言うまでもありません。
しかし、コンクリートにヒビが入ったり、鉄筋が埋まっている深さが浅すぎると、そこから鉄筋のサビが始まります。
鉄筋が錆びると?
鉄筋が錆びると、わずかながらに膨張します。また鉄筋の強度が落ちます。そして膨張した鉄筋がさらにコンクリートのヒビを進行させ、と、こうなると悪循環が始まります。
よく、テレビなんかで見たことあるでしょう。ヒビが入りまくったコンクリートから錆びた鉄筋がむき出しになっている悲惨な状況を。そうならない為にもしっかりとコンクリートに埋まっている、規定以上のコンクリートかぶり厚さ(鉄筋の周囲にどれくらいの厚さのコンクリートがあるかということ)が確保されている、ことが大切です。もちろん打設したコンクリートの中に異物(木片とか)が入ってしまっては問題外です。
基礎における鉄筋の役目は?
鉄筋コンクリート構造の鉄筋の役目は、コンクリートと密着することにより構造体に曲げ強度をもたせることにあります。(コンクリートは圧縮強度を負担)簡単に言えばポキっと折れる力を鉄筋で踏ん張っているということですね。
なんとなくだけど、表面の錆がコンクリートと鉄筋の密着を妨げているような気がするけど?
そのとおりです。手でボリっと塊が取れるような錆はアウトです。また手で触って錆の粉がふいているような状態でもアウトです。これではコンクリートと鉄筋の密着は期待できません。
しかし、表面上の多少の錆であれば、この錆によってコンクリートとの付着を増大させてくれます。つまり表面上のサビ程度であれば、まったく問題ないということです。
もし、これ以上の錆があるようであれば、ワイヤーブラシ等でこすって錆を落とせば問題ありません。(著しい錆はNGです。鉄筋の交換が必要です)
現場に行こう!
問題のない鉄筋のサビに気付いたあなたは、現場でもっと違うことをチェックしてみてください。
確かに、錆ている鉄筋は見た目が悪いです。大丈夫かよ? って思う気持ちも理解できます。ですが、この錆はどこの現場でもあります。これを完全にゼロにすることは難しい。
また、今回の記事であなたが現場で発見した表面上の錆は問題ないことが、ご理解いただけたと思います。この件についてネットで深堀りしても同じ回答しか出てきません。その時間があるのなら、それ以上鉄筋の錆を進行させない基礎づくりの方に時間を費やしたほうがよっぽど賢明です。
現場の職人さんやほとんどの現場監督は、この錆のことを理解しています。ですが、錆をそれ以上進行させない基礎づくりに対しては・・・?
どうでしょうか?
ぜひ、あなたのそのチェック力で確認してみてください。
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